中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3101回
成長株買いが株式投資の常識に

株はもともと利廻わりがいくらになるかを
予測して売り買いされたものです。
東京電力とか、東京ガスとか言った光熱関係は
毎年、ハンコで押したように安定した配当をしていましたので、
株価が動くと言っても1円か2円で、
バクチの対象にもなりませんでした。

それに対して、鐘紡、日清紡、東レ、帝人、東洋紡からはじまって
日本郵船とか大阪商船のような日本を代表する繊維や海運の株は
社会情勢の変化によって利益が大きく左右され、
配当も増減したので、
株価が激しく動きました。
とりわけ敗戦後の低迷から立ちなおって高度成長がはじまると、
産業界の地図が大きく変わって、
次の時代を背負うような業種や銘柄が次々と誕生しました。

ちょうどその時期に私は兜町に出入りするようになったので、
「こんな会社は駄目になる」
反対に「こんな会社は前途洋々だ」と
相撲の番付表が次々と入れかわることになったのです。
今まで株とは全く縁のなかった一般大衆が
株にもかかわるようになったし、
その人たちのふところ具合がよくなるに従って
一流株を買う人も増えましたが、
時代の波に乗ってもっと大きくなるんじゃないかと
見込まれるいわゆる成長株に目をつける人もふえはじめました。

すると先を見込んで利廻わり6%あった株を更に5%、
4%にしかならないところまで買いあげて行く風潮が出てきます。
それでは過去の常識を裏切るような現象が起るので、
ダイヤモンドや東洋経済の記者たちは説明に困り、
「この株は1回先の倍額増資を見込んだ値段まで
買いすすめられています」
「いや、この株は2回先の倍額増資まで
織り込んだ値段になっています」
と苦しまぎれの解説をやった時代がありました。
株は成長を前提として買うもので、
利廻わり株券買いの時代は終ったと説明するよりほかない新高値を
次々とつけるようになったのです。
いま皆さんが常識として受け入れている株のやり方は
50年前は誰も想像できないような新しい考え方だったのです。


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2008年9月5日(金)

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