中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3114回
ジャパン・ダラーの方がリスクは低い

日本の海外収益は統計数字に出てくる分だけで
昨年度は4.3兆円にものぼり、
ふえる方向にあると発表されております。
それだけ海外で活躍する日本の企業もふえ、
年と共に更にふえるということですが、
外国に行って全くやったこともないような
新しい事業に取り組んで成功したわけではありません。
トヨタ自動車なら豊田市で実際にやって
成功したことをアメリカやタイに持って行って
もっとたくさんの量をつくるようになっただけのことです。

もちろん、そういうことができるだけでも大へんな力量です。
遂にアメリカのビッグ・スリーを追い抜いて
世界一になったのですから、
四十何年前に私が豊田市の工場を
見学に行った頃に比べれば天と地ほどの違いがあります。
商売でも学問でもその得意とするところを
伸ばす方がその苦手とするところを補うよりは
ずっと効率がいいのですから、
もちろん、それはそれでいいのですが、
もしそうだとすれば、
日本人は今後貯め込んだドルを
どう活用するのかということになると、
同じことをヨーロッパやアメリカだけでなく、
ロシアとかインドとか、
更にはブラジルやアフリカにまで
伸ばして行くことになります。
日本のドルがアメリカの銀行を買ったり、
ニューヨーク証券取引所を買うのに
使われることはないのです。

自分たちが慣れた仕事をくりかえすだけでいいのなら
リスクは少いのですが、
その代わり自分たちの知らない国に行ってやるのですから、
カントリー・リスクには遭遇します。
折角、工場をつくりあげて生産も順調に動き出したら、
国やパートナーと不仲になり、
会社ごと捲きあげられてしまうということもあり得るのです。
現地で生産している日本企業が
現地で上場しているケースはまだ少ないので
日本の投資家のふところにまで響くのには
まだ早すぎますが日本企業が進出した国の
政情に大きく左右されることは
先ず免れられないでしょう。
でも産油国のお金よりは
ずっとリスクは低いと見てよいでしょう。


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2008年9月18日(木)

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