中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3158回
助け船を一切出さない国もあります

アメリカが日本と似たような金融不安におち入る時が必らず来る、
アメリカは日本の窮状に対して手を貸さなかったばかりでなく、
日本の無能ぶりをせせら笑いましたが、同じような目にあった時の
アメリカのお手並みを拝見したいものだ――と私は10年前に
拙著「マネーゲーム破れたり」の中で書いたことがあります。

いままさにそのお手並みを拝見する場面に
立ち至ったところですが、
「ウイル」誌の11月号で日下公人さんが
「リーマン・ブラザーズ」の救援に
「日本はビタ一文支払うな」という文章を書いています。
アメリカがやってきたことに対して
日本では遠慮がちな口裏あわせが多いのですが、
これは珍しく冷徹な批判で、第1次石油ショック以来の
アメリカ資本主義の貪慾で非情な動きを見抜いています。
ここで頼まれて助け船を出せば、
金儲けにしか目のないアメリカの禿げ鷹たちが
日本の小さな船に乗り移って、
日本の船頭さんたちが同じ船の漕ぎ方をする心配があります。

その点、香港の銀行はもとよりのこと、中国本土の銀行も
大なり小なりサブプライム・ローンのとばっちりは受けていますが、
アメリカの銀行からSOSの発信があっても、
一切受けつけない方針に徹しています。
とりわけ大陸系の銀行は人民銀行の指示があってのこと
でしょうが、それこそブラックストンへの出資を最後に、
一切きく耳をもたない態度を続けています。
「お金でお金を儲ける」アメリカ式資本主義は
莫大な報酬を少数の経営者が先取りするシステムですから、
共産主義あがりの中国人に馴染まないこともありますが、
この先そう寿命は長くないと見限られているのだと見ても
恐らくそう間違ってはいないでしょう。

と言うわけでアメリカの金融業界の大掃除はまだ当分、
終わりそうにないので、それがアメリカの実物経済にまで及んで、
アメリカの景気後退がはじまろうとしています。
その影響をどうやってどこまで食い止められるかが
次の中国経済の見せ場になるところです。


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2008年11月1日(土)

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