中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3235回
大規模農業を実現するなら中国で

財部誠一さんの「農業が日本を救う」(PHP刊)を読むと、
野菜などの農作物の流通を農協経由から
いわゆる産直に変えたのは
福岡の大丸百貨店からはじまっています。
いまではスーパーの産直も
日本中どこに行っても珍しくありませんし、
有名レストランの使う野菜から魚や肉まで
産直は店自慢の1つにすらなっています。

でもそれは大半の常識的な経路は
依然として農協だということにほかならず、
日本では埼玉県の面積に等しい農地が
休耕地になっているということだし、
またあと10年もたったら、75歳以上の農民が
全体の6割を占めるようになるということでもあります。
しかも戦後、自作農として
農地を所有するようになった農民の実態が
いまやほとんどが日曜農民で、
ふだんは工場とか地方の公共機関で働いています。
自分たちが持っている土地を貸したら、
いざという時に売れなくなりますから、
農民は土地を貸すよりも
草茫々にしておく道を選ぶのです。

そういう日本の農業を救済できる政治家が
日本に1人でもいるでしょうか。
それは中国でも似たり寄ったりで、
中国の方が農民の所得が低い上に生産性でも遅れていますが、
中国の場合は土地が全部、国のものだし、
政府の発言権が強いので、国の方針によって
企業による大規模農業が既にはじまっています。
その場合も、需要が先にあって
その流通を担う業者が商品を確保することから
スタートしていることに変わりはありません。

そうした大規模農業はいずれも
野菜を海外に輸出することからスタートしていますが、
最近は大型スーパーが次々と
国内の大都市に進出するようになったので、
野菜でも果物でも市場に天秤棒で担いで売りに来るのと別の
流通経路ができあがりつつあります。
大規模農業も実は大規模小売業者によって
もたらされたものであり、
やがてそれが農作物の生産形態を
一変させる方向に向いつつあります。
日本の農業を組織変えするのは並大抵のことではありませんが、
日本の農業技術を携えて中国の農業の大規模化を
促進する方が抵抗がうんと少なくてすむのではないでしょうか。
私なら日本でやるのはあきらめます。


←前回記事へ

2009年1月17日(土)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ