中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3279回
銀行はいよいよお金を貸してくれなくなります

どうして銀行がお金を貸して
着実に金利と元金の回収ができたかというと、
融資先が着実にお金を儲けることができたからです。
融資先は産業界の万般にわたっていますが、
一口で言えば、付加価値を着実に稼いで
その中から借入金の元利を返済することができたからです。

ところが、お金を集めて来てお金でお金を稼ごうとすると、
株の値上がりとか、積立金の吐き出しを強制するとか、
無能な経営者の入れかえだとか、
企業の整理や売買による増収増益を狙うことになります。
アメリカの産業界にそういうスキマがあった間は、
アメリカの中でM&Aをくりかえせば、
お金をふやすチャンスがありましたが、
ほぼ種が尽きると、金融資本はアジアやヨーロッパにも進出して
同じ手口をくりかえすようになりました。

金で金を稼ぐビジネスは投機的要素が強く、
行く先がなくなれば必らず不動産に向います。
ドルを稼ぎすぎた日本がそうでした。
世界を股にかけて稼ぐ投機資金の場合は、
為替も石油も当然、その対象になりましたが、
一番最後はやはりアメリカ国内の不動産に向ったのです。
そして、投資の対象が付加価値を生む事業でなくて、
支払能力のない低所得者層に搾られたために、
お金を貸した側の金融機関がその大波をかぶることになったのです。

もし今後も融資先を付加価値を稼ぐ事業体に戻さず、
お金でお金を稼ぐビジネスをくりかえすことになれば、
恐らくまた同じことを
10年くらい後にくりかえすことになるでしょう。
いまの日本の銀行界の動きを見る限りでは、
もともと日本の銀行群は
日本銀行という母艦に引率された船団みたいなもので
やることも同じなら、汽笛をあげるのも同時ですから、
自分たちだけが昔に戻って地元企業の面倒を見ることは
先ずあり得ないのではないでしょうか。
もしそうだとしたら地元の中小企業が金利を下げてもらうより
預金者が定期預金の金利を少しでもあげてもらう方が
景気を刺戟することにつながるんじゃないでしょうか。
銀行を利用するのは
資本調達が困難になった大企業に一極集中すると考えて
先ず間違いないと思います。


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2009年3月2日(月)

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