中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3377回
日本の銀行は船団離れて只今、漂流中

銀行の本来の仕事は、人のお金を預かって、
「仕事をしているがお金に不足している人」にお金を貸して、
その人が儲けたお金の中からいくらか利息をもらって、
預金者と分け合うことです。
そのためには、「お金を貸してもらえませんか」
と頼みに来た人の仕事の内容をよく研究して、
お金を貸しても絶対大丈夫かどうか、
絶えず勉強しなければなりません。

消費者金融がまだはじまる前の、経済の成長期の銀行員は
実際にそういうビジネスをやっていました。
商店街に融資していた中小銀行や信用金庫の支店長さんは
どの店は毎日どのくらいの水あげをしていたかまで
よく知っていたのです。
ところが、消費者金融がはじまると、
条件さえ揃えば、金を貸す相手には困らなくなったし、
アメリカに端を発する利付債券が次から次へと誕生すると、
いちいち融資先とつきあわなくとも、
楽をして利息を稼ぐ道を選ぶようになってしまったのです。

お金を借りて一財産つくるために
「銀行とつきあう法」を書いた私も、
10年前には「銀行とつきあわない法」を書くようになり、
やがて銀行が行き詰る日が来ると確信するようになりました。
日本の銀行は名前が違うだけで
どこも同じことをやる船団の中の1隻にすぎないので、
こちらとしては預金をする銀行が1社あれば足りるようになり、
事業資金の融資を頼むところではなくなってしまったのです。

ですから銀行株は投資の対象ですらなくなり、
その値動きにも全く注目しなくなってしまいました。
国際化がすすんでも日本の銀行は
海外に進出した日本企業の面倒すらろくに見ないだけでなく、
日本で日本人から預った預金をアメリカの金融機関に貸して
楽をして儲けようと考えるだけですから、
気がつたらアメリカの金融機関並みの被害を
アメリカから受ける立場におかれております。
同じく大きな被害を受けたホンコン・シャンハイ・バンクは
「それでもアジアで受けた被害が一番少なくてすんでいます。
政府資金の世話にはならずに自分たちで資本を充実させて、
銀行本来の事業に戻りたい」と言っていますが、
日本の銀行にはその元気すら見受けられないようです。


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2009年6月8日(月)

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