中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3392回
国の力で私企業の立て直しはできない

GMの倒産が決定してアメリカ経済は最悪の谷底に達したので、
もういいだろうとばかりにニューヨークの株価も戻りに転じたし、
ドルも強気に転じています。
しかし、これでアメリカの経済が戻り足に転じたかというと、
残念ながら私はまだまだこれからが本番のはじまりだと見ています。

35、6年前、第一次石油ショックが起った時、
アメリカの自動車会社が省エネに全く関心を示さず、
相変らずガソリンを大量に食う大型車をつくり続けるのを見て、
私は「これでアメリカの自動車産業の滅亡がはじまる」と、
「先の見えない者は滅びる」(グラフ社1984年刊)
に書いたことがあります。
ガソリンが高くなったら省エネ車に全力を傾けるべきなのに、
「小型車では一台で500ドルしか儲からない、
大型車は1500ドル儲かるから大型車をつくるべきだ」
と環境の変化を全く意に介しなかったアメリカの自動車メーカーは
そのうちに消費者から置いてけぼりになると私は思ったのです。
それから30何年もかかってしまいましたが、
素朴な頭で考えたことが実際に起ってしまいました。

何しろ世界一の企業が呆気なく倒産してしまったのですから、
誰だって眉毛を唾でこすりたくなります。
しかもその対策として政府が莫大な資金を提供して
立て直しに尽力するというのですから、
もう一度、びっくりしてしまいます。
国営事業はもともと金食い虫で
全く能率が上がらないから民営化に動いてきました。
これは世界的な傾向です。
それなのに時代から取り残されて倒産した企業を
国の力で立て直すとはどういうことでしょうか。
民間で駄目になった企業を
政府が肩代わりして立て直すことができるのなら、
世の中に苦労することなんて何もない筈です。
そういうことが不可能だからこそ、
いまのような資本主義体制が
次の時代の大きな荷物になっているのです。
ビッグ・スリーをはじめアメリカ経済の立て直しは
そんなに簡単にはできないというのが
アメリカのバブルの崩壊に対する私の物の見方です。


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2009年6月23日(火)

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