中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3394回
次はインフレでなくドルの没落です

アメリカの政府が倒産する大企業の尻ぬぐいをやるために
次々と莫大な資金を提供するのを見て、
すぐにも猛烈なインフレを連想する人が少なくないと思います。
でも実際にはインフレにならないだろうと私は見ています。
どうしてかというと、
失われた財産を新しいお札で補っているだけで、
失われた財産がそれ以上に高く評価されるわけではないからです。

その上、倒産した企業や失業者は
それによって失われた分を取り返せるわけではないし、
失った分だけ倹約を強いられますから、
お金が使えなくなくなります。
さしあたり失業した人たちは
使うお金が減った分だけ節約を強いられるし、
企業にしても設備投資をひかえるよりほかありませんから、
消費も投資も減少する方向です。
いくらお札を刷っても、
お札がタンスの中にしまいこまれて出廻らなければ、
物価が上がるわけはないのです。

ところが、政府が気前よくお金を出すのを見ると、
経済を扱うプロの人たちでも
「大へんだ。インフレになるぞ」と反射的な反応をします。
お札がたくさん出回れば、お札の値打ちは下がりますが
物を買う人も減りますから、
インフレに直結しないことをつい見逃してしまっているのです。
ふえたお札は無くなった分を補うためで、
物を買うお金がふえたわけではありませんから、
物が不足するどころか、
物があり余って安売りをしなければ売れなくなってしまうのです。

いま不景気は世界中に起っていますが、
経済的な打撃の大きい国ほど戻りが遅いと見てよいでしょう。
そういう意味で一番打撃の深刻なのはアメリカであり、
お札を一番たくさん刷る必要に迫られているのもアメリカです。
従ってお札の値打ちが一番下がるのもドルですから、
ドルの値打ちは他の国々のお札に比べると、
更に一段と下がる傾向にあります。
アメリカの経済の恢復は一番最後になると見るべきですが、
その影響は世界の隅々まで及びますから、
そんなにのんきに構えてなんかおられないのです。


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2009年6月25日(木)

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