第3411回
一流レストランが生き残るためには
もう1軒、私が成都からはじめて東京に来た中国人の夫婦を
案内して行ったのが上大崎にある
おはらス・レストランというフランス料理屋です。
中国人だから中国料理がいいかなとも思ったのですが、
本格的なフランス料亭は成都にないし、
フランス料理の方が中華に近いので、フランス料理にきめたのです。
ちょうど私が次の時代に日本人に受け入れられそうな
値段と味の店を探がしていたので、
料理が1人1万円ですむ料理屋として
試めしてみる気を起したのです。
何しろ五反田の先のマンション街の中にあって、
しかも北海道で十何年もやったあとに
東京に出てきてひらいた店とあっては、
かなり昔にフランスで修業した
もういまはどこでも見当らない
トラディショナルなフランス料理かも知れません。
それだけにソースもしっかりした
古典的なフランス料理屋を期待したのです。
ところが私を待ち構えていた小原シェフは
札幌で私に料理を出したことがあって
初対面の人ではありませんでした。
サービスをするフランス人の女性も多分は連れ合いでしょうが、
日本語がしっかりしていてとてもびっくりしました。
ここも1万円のコースですが、
小盛りにした神経の行き届いた料理が次から次へと出て来て、
成都から来たお客さまをすっかり満足させた様子です。
6人でワインは白と赤と2本あけましたので、
サービス料10%を加えて8万4千円でした。
これがいま東京で一流にランクされるレストランになると
そのまた倍になってしまいますので、
不景気が長期化すると
一流レストランに行っていた人でも、
こういう店でガマンするようになるんじゃないでしょうか。
私が一流レストランのオーナー・シェフなら、
一番高いメニューはそのまま残すとしても、
1人当り1万円ですむ新しいメニューをつくって
新しいお客の呼び込みをします。
古くからのお馴染みにしても
腕が同じで単価が安くなったら来なくなるわけがありません。
そうでもしないと生き残れない時代になったのです。
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