中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3521回
一夜明けたら只の金貸し

銀行はもともと事業をやる企業にお金を貸して、
企業があげた利益の中から
金利分にあたる分け前をもらうのを本業としていました。
ですから融資先がどんな商売をやっているのか、
経営は大丈夫なのか、常に細心の注意を払っていたのです。

ところが、日本の場合は次から次へと外貨を稼いで
過剰流動性で金あまりが目立つようになると、
銀行は取引先の中でも担保物件も充分ある優良企業に
片っ端からお金を貸すようになり、
その資金が不動産や株の投機にまわって
資産インフレを惹き起しました。
東京の青山通りの地価は
坪300万が一挙に1億円まで暴騰したのですから、
似たようなことが日本の隅々まで波及したことは
皆さんがごらんになった通りです。

土地や株に買い向うお金がふえれば、
いくらでも値上がりします。
しかし、生産によって生みだされたものではなくて、
お金の流れに反対の現象が起れば、逆の現象を起します。
経済界がピンチにおちいって
借金の返済のために資産を換金する側にまわれば、
どこまで下げるのか見当もつかないのです。
日本のようにドルを稼ぎすぎただけでも、
ピンチから立ち直るのに16年もかかってしまったのですから。
その間に日本の銀行は弱小企業に融資して焦げつくのを怖れて、
アメリカの投資会社に只のような金利でお金を貸しまくり、
日本の優良企業の大半を
アメリカの禿鷹たちの爪の下に追い込んだのです。
日本の銀行はもはや日本の企業を育てる
乳母の役割を捨ててしまったといっても
決して言いすぎではないでしょう。

今回の世界的金融不安で、
日本の銀行がアメリカの銀行ほど被害を受けていないのは、
日本の銀行の経営者に先見の明があったからではありません。
アメリカの債券を大量に買うだけの
体力がなかっただけのことだと見ています。
そのおかげで何とか生命がつながっていますが、
産業界を育てる役割を放棄した只の金貸しに
堕落してしまったことに何の変わりもありません。


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2009年10月30日(金)

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