中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3543
はじめがあれば終わりがあるのが水商売

ホテルにはレストランはつきものという常識があったので、
はじめて渋谷ビジネスホテルを計画した時、
私は地下にレストランをつくるスペースを用意しました。
ところが、昼食、夕食どころか、
朝食を食べる人も少いことがわかって、
少くとも宿泊客相手のレストランは
つくっても商売にならないという結論に達しました。
一流ホテルに泊っている人だって
社用や商用であう人に連れられて
ホテル以外のところで食事をすることが多いのですから、
ビジネスホテルのレストランは
更に利用の対象にならないことは目に見えています。

仕方がないので、別の用途を考え、
当時人気の出はじめていた
地下劇場ができないものかと画策しましたが、
舞台をつくるだけのスペースもないし、
天井が低くて観覧席もうまくできません。
仕方がないのでシャンソンを歌うレストランで
妥協することになり、
エンターテインメントはシャンソンだが、
料理は中華料理の店をひらくことになり、
その店にキュービック・プレイハウスと命名しました。
他にシャンソンの店があまりなかったので、
シャンソン好きの集まる有名な店になり、
古参では淡谷のり子さん、深緑夏代さん、
続いて、美輪明宏、美川憲一の諸君、
さてはのちに有名になった金子由香利さんたちが
常連としてずっとファンの人たちを娯しませてくれました。

しかし、夜の商売は同じことをくりかえしておれば、
必らずお客にあきられる時が来ます。
来る度に少しばかりの驚きがなければ
常連だって足が遠ざかってしまいます。
店の商売が少しずつ悪くなって行くうちに
マネージャーに任命した男も次第に元気を失い、
とうとう酒の飲みすぎで肝臓を悪化させて死んでしまいました。
「店は何のためにひらくかというと閉めるためだ」
という私の予想がそのまま現実になってしまったのです。
こんなことをこの30何年間に東京をはじめ、
台北や北京や上海でくりかえして来たのですから、
そう賞められたことでもありません。


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2009年11月21日(土)

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