中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3654
谷町なら未来の横綱を贔屓にすべきだ

私が「成長株買い」という投資法に気づいたのは
今から50年ほど前のことです。
当時、私が株に興味を持って「婦人公論」誌に株のことを書いたら、
NHKの人がそれを読んで、
「マイク片手に」という番組で
証券取引所に取材に行きませんかと誘ってくれました。
私は取引所の中に入ったことがなかったので、
喜んで株の取引をしている現場に入りこみ、
わあわあ雑踏している中で才取りをしている
証券会社の人にマイクを向けて
「あなたはお金を儲けたことがありますか?」とききました。
「ハイ、あります」と答えたので
「株でですか」ときいたら
「いいえ、土地を買って値上がりしました」と答えたので、
思わず失笑してしまいました。

以来、株の取引とあまりに近い所にいると
株で儲からなくなることを知るようになりました。
ちょうど浜辺に立って海を毎日見ていると、
波ばかり見えて潮の流れがわからなくなるのと同じです。
波の高い低いばかりが見えて、
どんな潮の流れの中にどんな魚がいるか
見えなくなってしまうのと同じです。

「マイク片手に」のあと、
中央公論社の嶋中鵬二社長に乞われて
当時創刊したばかりの「週刊公論」に
「会社拝見」という上場会社を訪問する連載を
執筆することになりました。
その頃、はじめて日本経済新聞をとるようになり、
株の予想をする証券会社の社長さんや
株式部長さんたちの予想記事を読むようになったので
その人たちを訪ねて片っ端から意見をきくようになりました。

当時、取引所のトップ銘柄はいずれも繊維が中心でしたから、
どこへ行っても日清紡、東洋紡、鐘紡、帝人、東レの話ばかりで、
いま日本を代表するような人気銘柄はやっと店頭株に顔を出すか、
顔さえまだ見せない時のことです。
私は相撲を例にとって
「横綱が出て来たら、小学生の間から一せいに拍手が起るけれど、
本当は次に横綱を倒す若手をひいきにするのが
谷町じゃないのですか?」
と兜町のプロたちにさんざ嫌味を言ったものです。


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2010年3月12日(金)

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