中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3716回
帝国主義の終りのまた終わりです

最近、一番目にする情報は、
オーストラリアやブラジルの鉄鉱石業者が
原料の提供価格をいきなり倍近くに値上げする通告を
日本の製鉄メーカーに送って来て、
新日鉄をはじめ日本のメーカーが悲鳴をあげていることです。

戦争が終わってから既に60何年もたち、
日本は無一物に近い状態から再出発して
アメリカに次ぐ世界第二の経済大国にのしあがりましたが、
日本自体は資源も資本もない貧しい国でした。
それが世界中の注目を浴びる大成長をしたのは
日本が工業化に成功したからですが、
成功の原動力は日本人の技術力と勤勉さに負うところが多く、
自国内に資源がなくとも工業国として成功できることを
証明して見せたのです。

資源がなくても成功できるということは
資源は買うことのできるものであり、
金さえあればいくらでも手に入ることを
広く世界中の人たちに教えたのです。
それまでは大国とは領土の広い国のことであり、
資源がなければ大国でないと考えられていたので、
どこの国も植民地の獲得と経営に無我夢中でした。
しかし、マルクス主義の抬頭と前後して
植民地の反乱も次々と起り、
第二次大戦後はどこの先進国も
植民地の独立運動には手を焼くようになりました。

そうした中で、資源がなくても
買えばいくらでも手に入ることを、
無一文になった日本が証明して見せたので、
植民地の放棄と独立が
20世紀に新しい一頁をつくる結果になったのです。
よその国ではあまりそのことにはふれませんが、
私は日本が金持ちになって行くプロセスに
たまたま東京に在住して
この目でその移り変わりを見てきたので、
帝国主義の終焉について
日本は大きな役割をはたしたと見ています。

ところが、新興国の抬頭と同時に、
「お金があれば資源はいくらでも手に入る」という時代は
すぎようとしているのです。
日本のメーカーが大あわてをする時代がもうそこまで来ています。


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2010年5月13日(木)

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