中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3751回
海外進出で避けられない賃銀差

日本の企業が海外に進出したり、
工場をつくったりする時は、
もちろん、そうすることにメリットがあると
経営者が考えているからです。
とりわけ生産基地を海外に移す時は
そうした方がコスト・ダウンになるか、
販売に有利な場合に限られます。

私が最初にそれを実行に移した時は、
私が台湾に工業用地をつくって、
腕時計の文字盤を組み立てる仕事とか
カメラのレンズを磨く工場を日本から移しましたが、
私がその話を本に書くと、
それを読んだ韓国のサムスンの創始者である
李秉浮ウんがすぐ私のところへ連絡してきました。
私と同じ考え方をしていて、
次々と日本との合併会社をつくり、
工場の移転から着手していたのです。

のちに台湾や韓国では間に合わなくなったのと、
中国が海外工場の誘致に熱を入れるようになったので、
私はコスト・インフレに悩みだした
日本のいくつかのメーカーに声をかけました。
その当時の日本と中国の賃銀差は30倍もありました。
日本の平均給料は20万円くらいでしたが、
中国では1万円もありませんでした。
賃銀は30分の1でしたが、
訓練されていない
中国の労働者の生産性は30分の1もなかったのです。

ですから、いくら賃銀が安くても使い物になりませんから、
中国人を使う場合は
先ず働く人の訓練からはじめなければならなかったのです。
海外進出に否定的な人たちは訓練することにも否定的でした。
でも私は「先ずやって見ることだ」
という考え方の方ですから、
先ず台湾でやって見て、
台湾で訓練して1人前になった人を係長にして
中国に連れて行くことを提唱しました。
いまはそんなことを言う人はおりませんが、
台湾の工業区で現地生産に成功した人が
工場を大陸に移してそこに台湾の人を連れて行って
現地の若者を訓練すると成功する確率がうんと高かったのです。
その場合でも日本から現地に派遣された日本人と
現地でやとった労働者の賃銀差は
50倍どころの騒ぎではなかったのです。


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2010年6月17日(木)

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