中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3763回
レナウンのノウハウ移転がいい例です

つい最近もレナウンの会社に中国の大手ファッション・メーカーが
資本参加することが新聞に発表されました。
資本参加すると言っても僅か30億円で、
あれだけの歴史があって、実績があって、
傘下にダーバンの会社も持った会社を
そっくり買収してしまうわけではありません。

私はレナウンの創業者たちも知っているし、
伊勢丹の創業者たちと親戚だった関係も知っているし、
たまたま経営の責任者とは
うちの息子と向うの息子と学校が同じだった関係で
つきあいもありました。
ですからレナウンの黄金時代もよく知っているし、
レナウンがダーバンを創業した頃のことも記憶にあります。

それだけに一時代を画したファッション産業の代表企業が
斜陽化してだんだん赤字体質になって行く過程を
そばで見守っているのも決して楽なことではありませんでした。
しかし、そういうことは他の業種にも起ることだし、
国にさえ起ることです。
いまの日本の政府がまさにそうした動きですから
見ていてハラハラしても手の出し様もありません。

しかし、日本の成長期に高度成長と共に成長した企業には
それだけの技術とノウハウが温存されています。
中国の企業がそれを買収しても、
レナウンを成長企業に戻すことはできませんが、
成長過程にある中国の縫製工場を一新させるのには役立ちます。
またそれだからこそ中国のスケールの大きなメーカーが
食指を動かしたのだと思いますが、
中国側にそうした企画能力のある人がおれば、
本当に安い買物ではなかったかと感心しています。

1億2千万の成熟人口のあるところでは
もはやカバーしつくされた市場ですから、
日本で通用しなくなったノウハウでも、
13億のまだ成長過程にある市場では大きな応用の余地がある筈です。
日本では既に斜陽化した業種や市場でも、
まだまだいくらでも埋めるべき空間がありますから、
同じ企業買収が今後も違った分野で
次々とはじまるのではないでしょうか。
ノウハウの移転はまだこれからはじまるところです。


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2010年6月29日(火)

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