中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3780回
投信の運営をする自信はありません

もう50年も前のことですが、
私が株式市場に成長株買いという新しいアイデアを持ち込んだ時、
私が週刊誌でどこかの会社を取り上げると、
毎週のようにストップ高をしました。
証券会社がすぐとんで来て、
次から次へと講演を頼んだので、
私はあッという間に有名講師の仲間入りをしました。
まだ30代の半ばだったのに、
私の前座を日立製作所の社長とか三鬼陽之助さんがつとめて、
私は真打ちをやらされたのです。

おかげでお金も儲けさせていただき、
自分の家やビルまで建てさせていただきましたが、
私はそれを自分の職業にする気はさらさらありませんでした。
盛んな時は月に15回も講演をこなし、
講演料だけでも年に2億円近くもいただきましたが、
いくら誘われても証券のプロに転向することだけは
拒否し続けてきました。
あの頃株式評論家として売り出した人で
今日もそれがつとまっている人は1人もいませんし、
私に講演を頼んだ証券会社の人で
私より懐具合のよくなった人は残念ながら1人もありません。
どうしてかというと、
毎日、朝から晩まで海を見ていると、
波の高い低いばかりが目について
魚のいる流れはどこかが見えなくなってしまうからです。
それと同じように株価の上げ下げばかり見ていると、
株を動かす原理原則を見失ってしまうのです。

ちょうど日本に投資信託が誕生したばかりの時でしたから、
私の意見に賛成して株で儲けるようになった人たちから
「邱ファンドをつくったらどうですか、
そうしていただければ、
僕たちも喜んで参加させていただきますよ」
としつこく誘われました。
私自身には最初からその気はなかったのですが、
念のため「ファンドっていくらくらい集めるのですか?」ときくと
「そうですね。30億円ではどうですか?」
「じゃおききしますが、30億円のお金を預ってそれを倍にしたら
私はいくらもらえるのですか?」
「まあ、3億円ではどうですか?」
私はすぐに反応しました。
「そんな血のにじむ思いをして3億円もらうのなら、
私は自分のお金を3億円出して3億円儲けることにしますよ。
その方がずっと気が楽じゃないですか」
人のお金を預かるなんてそんな重荷を私が担げないことは
はじめからわかっていることなのです。


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2010年7月16日(金)

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