中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3796回
外貨準備高は政府のお金ではありません

今や中国の外貨準備高は日本を遥かに突破して
世界のトップを行くようになりました。
日本はドルをいっぱい貯め込んでも、
アメリカから属国扱いを受けているので、
余ったドルの大半でアメリカの国債を買い、
寝ていても利息がもらえるような横着な対応しかしていませんが、
中国はアメリカの国債を一番たくさん買っていても、
今にドルが目減りする時が来る、
目減りしたら自分たちが大へんな目にあわされると
戦々兢々としています。
ですから、何とかそのお金で資源を買ったり、企業に投資したり、
技術の買収に使おうと血眼になっています。

恐らくそうした動きは
今後一そうはっきりした形で激化すると思われますが、
資源や技術の買収は政府が表に立ってやることではなくて、
民間企業がやることになりますから、
政府が人民銀行の持つ外貨を何らかの形で
買収する企業に用立てすることになります。
それも普通の企業の資金ぐりと違って、
外国の一流企業をそれこそ企業ごと買収するスケールの資金ですから
天文学的数字になってしまいます。
それを政府の命令一つで人民銀行が用立てるわけではありません。
もともと外貨準備は政府のお金ではなくて、
民間が輸出をして稼いだ民間のお金です。

たまたまその外貨を政府があずかっているだけのことで、
あずかっていることを奇貨として政府が勝手に使ったら、
国内の過剰流動性は悪性インフレにつながって、
物価を押しあげてしまいます。
ですから国が外貨を使う場合には
それに相当する人民元の回収をしなければならないのです。
たとえばブラジルやオーストラリアの鉄鉱石の会社を
中国のどこかの会社が買収する場合には、
その会社が民間の資金を集めて
そのお金で人民銀行の外貨を買う必要があります。
政府がそれをやる場合は政府が国債を発行して
民間の資金を回収することになります。
政府系の銀行がその役割をはたす場合は
その銀行が民間の資金を集めることになります。
最近、どうして多くの銀行が
天文学的数字の増資を息もつかずにやっているのか、
その謎が少しばかりとけてくるのではないでしょうか。


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2010年8月1日(日)

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