中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3862回
家業はすべて消えてなくなる運命に

時代が変わると、人を金持ちにするビジネスも変わります。
昔は身分制社会で、サムライの子はサムライ、
百姓の子は百姓ときまっていましたから、
家業を継ぐのは常識でした。
しかし、明治以後、身分制が廃止されると、
士族だろうと平民だろうと、雇ってくれる所さえあれば、
どんなところにでも就職することができるようになったので、
身分制は次第に崩れて行きました。

と言っても、天下の大勢は家業を継ぐのが常識であり、
ちゃんとした家業のある家に生まれた者は学校を出て一時期、
サラリーマンになることはあっても、
やがて家業を継ぐ人は珍しくありませんでした。
そうした社会習慣が完全に崩壊したのは
社会全体の工業化と教育制度の普及によるものであり、
畳屋や床屋の息子たちが大学に行くようになれば、
家業を継ぐ人がいなくなったとしても
それを奇とする空気は全くなくなってしまったのです。

そうなると、家に立派な家業があり、
老舗として後を継ぐ人がいないと困る場合だけ、
大学を出て上場会社とか銀行でサラリーマンをやっていた息子が
中途退職をして家業を継ぐようになりました。
その中でも外の空気を吸ったことのある人だけが
時代の変化に気づき、
どう対処したらよいかわかるので、
家業の中には親の時代より成長したものもあるし、
なかには呉服屋の息子が
日本を代表するスーパーのオーナーになったり、
醤油屋が世界を相手の商売をやるようになったケースもあります。

しかし、時代が変わると、ハヤる商売も次々と変わりますし、
時代に見捨てられる商売もあります。
染物屋や下駄屋はもうどこを探がしても見当らなくなったし、
三業地の商店街だって
郊外のスーパーに取って代わられてしまいました。
「会社の寿命は30年」と言いますが、
かつて30年もった事業でもいまのように変化が激しくなると、
はたして10年もつかどうか。
そうなると人は一生の間に
少くとも3回は仕事を変えなければならなくなります。
それくらい激しく変わる世の中になってしまったのです。


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2010年10月6日(水)

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