中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3866回
時代が変わると、大財産家でも無一文に

電鉄会社のオーナーが銀行から借金ができたのは、
電鉄のビジネスが現金商売で、
銀行が取引をしたい相手だったからです。
電鉄の社長が「関係会社に融資してくれないか」と頼めば、
銀行だって無下に断わることはできません。

借りたお金で、私鉄の周辺で土地を買えば
次々と土地は値上がりするし、そこに住宅を建てて分譲をすれば、
住宅産業も成り立つようになります。
どこの私鉄会社も住宅産業に手を出したり、
ホテルを関連事業にしているのを見てもわかります。
おかげで私鉄のオーナーたちはたちまち大財産家になり、
やがて寿命尽きてこの世におさらばをする時、
後を継ぐ息子たちに、
「土地は絶対に売るな、借金もそのまま残せ、
それが資産を子孫に遺す要諦だ」と遺言を残して死んだのです。

どうしてそういうことができたかというと、
日本の税法で相続税の課税をする時、
政府の決めた土地の価格を基準にして評価をしたからです。
評価の水準は時価の大凡そ4割でした。
わかりやすく言えば
時価10億円している土地の税務署の査定は4億円、
実際に7億円の借金があれば、
本人にとって3億円の資産になりますが、
税務署が査定するとマイナス3億円の資産になるのです。

こういう資産を何百億円も持っておれば、
実際は300億円の資産がマイナス300億円の借金と評価され、
株とかその他の資産からその分、差し引くことになって
相続税はうっかりするとマイナスになることもあり得るのです。
電鉄会社の社長の息子たちがオヤジの後を継ぐことができたのは
こうした政府の課税基準をうまく利用することができたからです。

しかし、創業者たちは成長経済が終って
土地が10分の1まで大暴落することを全く想定していませんでした。
「どんなことがあっても土地だけは絶対に売ってはいかん。
わかったか」
と親に言われた遺言を忠実に守った息子たちや孫たちは
ごらんの通り全財産を失うような破目におち入ってしまったのです。
いい気味だと思う人もあるかも知れませんが
ちょっと「荒城の月」でも口ずさみたくなる話じゃありませんか。


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2010年10月10日(日)

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