中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3870回
自分の生まれ故郷で事業をやるな

人は自分の生まれ故郷で事業をはじめても
大成功をする可能性はほとんどありません。
もちろん、例外はあります。
しかし、そういう人は、
若い時に、故郷を離れて勉強は東京や大阪でやったとか、
就職も他所の土地でやったとか、
必らず故郷とは違った異文化に接しています。
そうしないと、他所者の眼で
自分の生まれ育って来た環境を見ることができないからです。

自分が生まれ育ったところは
子供の頃からよく見て知り尽しています。
村や町の路地がどうつながっているか、肉屋の隣りは床屋で、
床屋の隣りは洋品店だという町並みだって、
脳の中に焼きついています。
「知りすぎたのね」と歌の文句にもあるように、
頭に焼きついたことは批判の対象にならないのです。
批判の対象にならないことに改良の余地はありませんから
新しい発想につながるわけがありません。

俗に「江戸っ子は三代続かない」と言いますが、
東京で一番成功した人は東京生まれではありません。
いま香港一の大富豪と言われている李嘉誠さんだって
香港の人ではなくて、潮州から来た人です。
そういうわけで、仕事をやる人は
自分の生まれ故郷でやってはいけないのです。

戦後、工業化がはじまると、
工場は東京や大阪の周辺からスタートし、
そこで働く人を地方で集めて集団就職で大移動させたので、
日本国中が過疎地帯と過密地帯に二分されてしまいました。
時間がたつと
次の世代の生まれ故郷は工業地帯というのも珍しくありませんが、
農村だろうと、工業地帯だろうと、
自分の生まれた所は「知りつくした」所ですから、
新しく仕事をはじめる所ではないのです。

私は成長経済の時代に
日本国中を講演してまわったことがありますが、
どこに行ってもその土地で一番事業的に成功している人で
その土地生まれの人は滅多にありませんでした。
人は自分の生まれ故郷では成功できないようになっているのです。
同じことが今後も必らず起ると思って
先ず間違いないのではないでしょうか。


←前回記事へ

2010年10月14日(木)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ