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第3951回
「日本は世界5位の農業大国」のご一読を

もう1冊、私が最近読んだ本の中で面白かったのは
日本は世界5位の農業大国」(大嘘だらけの食糧自給率)
とサブタイトルのついた日本の農業政策の出鱈目を突いた本です。
著者の淺川芳裕さんは
月刊「農業経営者」の副編集長をやっている人で、
(講談社新書定価本体838円)とても読み応えがありました。

誰でも知っていることは、
工業化がすすむにつれて
日本では食糧の自給率が40%を割り込むようになり、
それを少しでも元へ戻そうと農林省が懸命の努力をし、
莫大な予算をとって農家の援助をしていることです。
そうした懸命の努力をしているにも拘らず、
効果は全く見られず、細分化した土地が荒れるに任せられ、
また農民の老齢化によってそのうちに日本の農業は
ピンチにおち入って行く方向にあると考えられています。

そうした常識に対して、
著者は日本の農業は先進国では1位のアメリカについで2位に当り、
世界の農業国と比べても第5位にあると
数字をあげて反論しています。
農業国として知られたオランダでさえも、
輸出が増えると同時に輸入もふえて、
人口世界58位の国が輸入額では世界7位に並んでいます。
またパスタの国イタリアは小麦の輸入大国で、
日本より200万トンも多い700万トン強を輸入しています。

どういうことかと言えば、
金さえあれば食糧は
世界中どこからでも輸入の可能な時代に入ったのであって、
自給自足のスローガンは時代錯誤の発想だということです。
現に一滴も石油の生産されない日本が
石油の自給自足を心配していないではありませんか。
人より高いお金を出せば、
ヨーロッパに向って石油を運搬しているタンカーに
方向転換をさせることもできることを
日本人は知っているのです。

それと同じように農業にも
革命的な思想の切り換えが必要な時代が来ているのです。
私は日本農業の次の展開は日本国内に限らないと見ていますが、
その前に先ず日本農業の在り方を正しく認識するためにも、
この本のご一読をおすすめします。


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2011年1月3日(月)

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