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第4042回
終身雇用と年功序列続け今や天然記念物

かつて日本の国には終身雇用制と年功序列給という
人事制度がありました。
終身雇用と言っても死ぬまで働かせてもらえるわけではありません。
平均寿命が60才足らずで「人生50年」と言われた時代には
定年55才になる前に死ぬ人も珍しくなかったし、定年でやめても、
その後そんなに長くは生きられないのが普通でした。
ですから定年があっても終身雇用と呼ぶことに
異議を唱える人はそんなにたくさんはいなかったのです。

学校を出てどこかの会社に就職すると、
日本人は定年になるまでずっと同じ会社に勤めるのが普通だったし、
何らかの理由で中途退職すると、
同業他社が拾ってくれることは滅多になかったので、
落ちこぼれとして世間から冷めたく扱われました。

その代わり一つの企業に長く勤めていると、年功序列給と言って
毎年のように少しづつ昇給がありました。
会社から有能と見なされて、出世コースを歩む場合は
高速コースを駈け上がることになりますが、
平々凡々のサラリーマンでも毎年のように少しずつ昇給があります。
大工のような長年の修業を要する仕事なら
年寄りの方が若い者より腕が上ということがありますが、
誰がやっても効率が同じシステムが普及すると、
年功序列給は意味がなくなっただけでなく、
給料の支払いの多い分だけ企業の重荷になります。

ですから会社に余裕があった間は何とか維持できましたが、
石油ショックに続いてのバブルが発生すると、
たちまち会社の重荷になって、多くの企業が肩叩きをしたり、
定年を逆に短縮して、
給料の高い高齢者に辞めてもらう方向に動きました。
かつて日本企業の長所と思われていた終身雇用制と年功序列給が
逆に会社の重荷になって、
バブルのあと16年に及んだ不況のプロセスで、
あッと気がついたら
かつての日本の美風はどこかにすっとんでしまい、
日本国中が派遣社員とアルバイトが主流をなす
集団雇用制に一変してしまったのです。
当然のことながら会社に対する忠誠心も一変してしまいました。


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2011年4月4日(月)

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