中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第4075回
駄目になる時はどちらもどちら

日本の土地の値上がりは
日本経済の高度成長が続く限り続きました。
「土地は絶対大丈夫だ、土地は値上がりを続ける」
という土地神話を疑う人はほとんどありませんでした。

ところが、値上がりを続ける地価に危機を感じとった
大蔵大臣と日銀総裁が不動産に対する融資に
ストップをかけたことがきっかけになって、
日本経済のバブルが一挙にはじけ、
16年にも及ぶ大不況が日本の産業界を一変させたことは
年配の方ならご自分で体験された通りです。

その遠因はと言えば、
ドルを稼ぎすぎたことですが、
バブルのはじけるきっかけは
政府が地価に対する融資にストップをかけたことです。
あまりに多い輸出黒字によって外貨を稼ぎすぎると、
国内業者は経費を円で払わなければなりませんから、
外貨を日銀に持ち込んで円に換えます。
すると外貨準備高は一方的にふえ続けますが、
市中に出廻わる円もそれに比例してふえ続けます。
そのお金は企業の資金計画をオーバーしますから、
不動産とか株とか美術品などに向って、
産業界に資産インフレを招来します。
それがあまりに度をすぎると大へんなことになりますから、
誰が日銀総裁で誰が大蔵大臣でも同じように
不動産の値上がりにストップをかけたでしょう。

でも土地神話に慣れた大半の人たちは
そのうちに景気が戻るだろうと信じていましたから、
土地の叩き売りには応じませんでした。
銀行の担保に入っていた株は
毎日、相場があってその日の時価で売れますから、
銀行に強制されて債務の返済に当てられました。
後になってふりかって見ると株の売却損は僅かですみ、
地価はそれこそ10分の1まで下がっても換金できませんでしたから、
そのあおりを喰って
何社もの銀行が倒産まで追い込まれてしまったのです。

して見ると、
財産として不動産と株がどちらが安全かは
その時の社会情勢が決定すると言った方が正しいでしょう。
ご本人の立場によってどちらの味方をするか違うだけのことです。


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2011年5月7日(土)

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