中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第4142回
油断大敵は農業の海外進出にも

成都に2泊して、次に長沙経由でとんだのが
上海のすぐ先の塩城というところでした。
どうして塩城にとんだかというと、
目的地はそのすぐ先にある大豊市という港町にある
地元政府の主催する大型模範農場に進出した
日本企業の種苗工場を見学するためでした。

青山にある不動産会社の社長の息子さんが
人に誘われて大豊市まで行き、
1億円ほどかけて苗を育てる温室をつくり、
育った苗を附近の農民に売るから、
現場を見て下さいと私の東京のオフィスまで来られたのです。
私は新しいことにはすぐ好奇心を持つ方ですから、
早速、旅程に組み込んだのですが、
それにしてもどうやって農民に買ってもらうのか、
「代金はどうやって支払ってもらうのですか」ときいたら、
「地元の政府が買い上げてくれるので」という返事でした。

そんな至れり尽せりの政府があるのかと私は首をかしげましたが、
夜遅く現地のホテルに入り、翌朝、現地に案内されたら、
なかなか立派な工場にアメリカ製の機械まで
ちゃんと設備されていましたが、
苗が常識より早く育つというのも希望的観測なら、
政府が農民に売ってくれると言うのも
うわごとだったことがわかって
早くも身にこたえている様子でした。

恐らく間に入った中国人にうまいこと言われて
うっかり話に乗って会社までつくってから
やっと本当のことに気づいたのではないでしょうか。
この20年間、私の周辺でもそういうことが再三ならず起り、
なかにはガイドさんにお金まで預けて
ひどい目にあった人もあります。
まさか今頃、まだそういう話が起ろうとは
私も思っていませんでしたが、
機械ははずせても、温室は壊せば二束三文ですから、
お金のことよりも気持のおさまるまでが
容易ではないのではないでしょうか。
私の周辺でもこれから農場の現地進出がはじまるところですから、
身の引き締まる思いをさせられました。
町中での店づくりにはよくある話でしたが、
農業でも油断のならないことは同じなんですね。


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2011年7月13日(水)

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