中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第4147回
仮に中国のマンションが1/3に値下がりしたら

中国は日本と違って最初から外国企業を盛大に導入し、
工業製品の輸出からスタートしたので、
生産が軌道に乗ると見る見る輸出が大幅黒字になって
「世界の工場」にのしあがりました。
貿易が黒字になると、外貨がたまります。
輸出業者は原料の輸入以外は、労賃も原料代も諸経費も
人民元で支払わなければなりませんから、
受け取った外貨を人民元に換えてもらう必要があります。

かくて人民銀行は莫大な外貨を準備金として
それに見合う人民元を次々と発行します。
それが急激に増加すると、国内で過剰流動性が発生して
資産インフレを起すことはかつての日本が体験した通りです。
中国でも同じことが起っています。
中国と日本の違うところは、日本では国内市場の成長が先で、
輸入がそのあとに続いているので、
一般大衆の所得の増大からはじまっています。

それに対して中国の場合は、
企業と企業のオーナーや株主が一足先に金持ちになっていて、
人手不足による一般大衆の賃上げはやっとはじまったばかりです。
こんなプロセスで過剰流動性がはじまれば
土地の値上がりや不動産ブームがはじまっても、
富の偏在が続くだけで不動産を買ってくれる大衆はおりません。

そこで各地方の政府の中で
誰か先陣を切ったのかはわかりませんが、
ありあまる銀行の資金に地方政府がわたりをつけて、
地方政府が保証をして地元の所得の低い住民に
マンションを担保にして
7割もの金を貸しつけるシステムを考えついたのです。
つまり今の全国的なマンション・ブームは
お金がなくて本来なら自宅を買う資格のない人に
借金をさせることによって全国的にもたらされたものです。

もちろん、なかにはちゃんと
ローンの支払いのできる人もあるでしょう。
でももし景気が悪化して、もしくはマンションの過剰によって
マンションが日本のような10分の1ではなくて、
3分の1にでも値下がりしたとしたら、
中国全土にどんなことが起るのでしょうか。
それが今の中国の産業界のおかれた位置だというのが私の認識です。


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2011年7月18日(月)

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