中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第4161回
立て看板屋が電通になる事はありません

大賀伝媒の董事長さんと話をしていると、
電通のことも博報堂のことも一通り知っていました。
将来、そういう分野に進出したいという意欲も持っていました。
それなら私の周辺に電通出身者もいるし、博報堂出身者もいます。
中国に行って広告やデザインをやりたいデザイナーもいますし、
パソコンを使って中国で一旗あげたい野心家もいます。

ということで、日本の若いスタッフも紹介したし、
デザインを主とした合併会社をつくることも実行に移しました。
その過程で私はかなり大量に大賀伝媒の株も買い集めました。
まだ40セントくらいだった株が
1ドル台に載せるだけ株も値上がりをしました。

しかし、実際に足を踏み入れて見ると、
中国の広告業界は日本と成り立ち方が違っていて、
立て看板屋が綜合広告業者に成長する環境でないことが
わかってきました。
テレビの広告はテレビ局が握っているし、
立て看板屋に広告企画からデザインまで任せる
事業会社もどこにもありません。
またコンピューターを使った広告は
それぞれの専門業者が大へんな勢いで成長しています。
立て看板屋にできることと言えば、
立て看板を道路筋だけでなく、
工業団地や住宅団地の入口に拡げるくらいのことです。

同じように経済が成長すると言っても、
国によって成長のプロセスが違います。
立て看板屋が綜合広告業者になることは
あり得ないことがわかったので、
私は合併会社を継続することも断念し、
買い集めた大賀の株も少しずつ手離しました。
セブン・スターズほど損はしませんでしたが、
かなりマイナスにはなったと思います。
その後の動きを見ていると、
シンガポールの有力な広告業者が私と入れ代わったようですが、
アメリカやヨーロッパの広告業の洗礼を受けた
シンガポールの企業が
私と似たような錯覚を起したのかどうかはわかりません。
私が勉強したことは同じ業界でも国によって
成長する過程とスピードに大きな違いがあるということです。
新しいことを考える度に新しい失敗に見舞われるのです。


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2011年8月1日(月)

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