中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第4175回
台風に出会っても下船はできません

アメリカの国債の格下げに端を発して、
ウォール街の株の大暴落を先頭に
世界中の株式市場が大地震に見舞われています。
その翌日の8月7日の香港市場も
「1日で9000億香港ドルが消えてなくなった」
と香港の新聞の大見出しになっていますが、
前にも述べたようにいくら株が大下がりに下がっても
あわてることはありません。
下がった時にあわてて投げ売りをするのでない限り、
あなたの乗っている船が大揺れに揺れているだけで、
あなたの財産が消えてなくなったわけではないからです。

いまお宝を載せた船は旧金山(サンフランシスコ)から
上海に向って航海しているところです。
アメリカ側に発生した低気流が
私たちの乗っている船に襲いかかったところです。
皆さんの乗っている船はもとよりのこと、
私の乗っている船も
もともとそんなに丈夫な船ではないので大揺れに揺れています。
でもそのうちに暴風雨もおさまって
波も静かになる時が必らずきます。
船が沈む心配はないのですから、
あわてて船からとびおりることはありません。

かつて私は香港から横浜に行くイギリスの貨物船の乗客になって
猛烈な台風にぶっつかったことがあります。
私は個室をとっていたのですが、大へんな揺れ方で、
ベッドからころがりおちないように
枕の横の杭にしっかりしがみついていました。
でも揺れる度にベッドの下においてあるトランクは
床の上を右から左、左からまた右ところがるのです。

嵐の中でとても食事をするどころの騒ぎではありません。
それなのに時間になると食堂に案内されました。
私は料理を目の前に並べられても
フォークを手にとる気になりませんでしたが、
見ると隣の席の船長さんが
ふだんと同じように平然として
出された料理を片っ端から平らげているじゃありませんか。

「ああなりたいものだ」とその時、思ったことを
いまも思い出しています。
沈む船に乗っているわけではありませんから、
嵐のすぎるのを辛抱して待っておればいいのです。
どうせ下りたくとも下りられない船に乗っているのですから。


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2011年8月15日(月)

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