中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第4193回
なぜ円高が止まらないのか

私たちを乗せて旧金山(サンフランシスコ)から
新々金山(上海)へ向う小さな船は
アメリカから吹き起ったつむじ風で大揺れに揺れていますが、
1億2000万人の乗客を乗せた日本という大船は
もっと大きな波に見舞われています。
どうしてかというと、日本丸はアメリカ丸より安全だと思われ、
大量のドルが次々と乗り移ってくるからです。

本当は日本丸もあちこち損傷を受けて
航行に支障を来たしているのに、
世界中を駈けまわっているドルの遊資から見ると、
そう簡単には沈まない安全列島に見えるのです。
ですから次々とドルが駆け込んで来て円に衣替えするので、
只でさえ円高で身動きのできなくなっている日本の輸出産業は
更に一段のピンチに追い込まれています。

それに対して日本の政府も日本銀行もなす術を心得ていません。
昨今、日本に駈けこんで来るドルは
輸出入の決済をする資金ではなくて、
世界を駈けまわる投機資金だというのに、です。
このまま放置しておけば、更に円高が進むことも考えられます。
そうなったら日本に駈けこんだ世界の遊資は
どんな動きをするようになるのでしょうか。

1つには他に逃げ場のない資金は
日本で資金の運用を考えるようになります。
日本の実情に慣れた私たちから見ると、
日本の証券市場や日本の不動産は
魅力のある投資対象ではありませんが、
外国人の眼には違った映り方をすることが考えられます。
とりわけドルを大量に貯め込んだ中国の企業にとっては
買収の対象になる事業がたくさんあります。

もう1つは少し落着きをとり戻したら、
一ぺん日本に駆け込んだ資金がもっと有望な投資対象を求めて、
中国をはじめアジアの各地に移動することが考えられます。
この場合は外貨だけでなく、日本人のお金と日本企業の大移動も
同時に起るのではないでしょうか。
極端な円高が続く限り、日本国内で操業を続けても
採算に乗らない企業はふえる一方ですから。


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2011年9月2日(金)

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