中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第4213回
肉屋のオヤジは貧乏籤なんです

もう39年前のことですが、
台湾が国連から脱退して政情不安におち入り、
それまで台湾の独立を主張していた私を
お尋ね者としていた国民政府が
「三顧の札」で私の帰国を頼みに来たことがあります。
私は日本の国定教科書で
「三顧の札」というのも習ったことがありますし、
それだけ礼を盡されたら知らん顔もできないと考えて、
24年ぶりに台湾に帰ったことがあります。

私は100人に及ぶ新聞記者やテレビ記者に囲まれて
台湾入りをしたのですが、
そのことが日本の新聞でも報導されました。
それを見た明治健康ハムの高橋社長が
すぐ私のところに連絡をして来て、
次に台湾入りをする時は是非お供をさせてくれませんかという
依頼がきました。
きいて見るとハム・ソーセージの原料にする豚肉を
台湾から輸入したくて何回も台湾政府と交渉したけれど
許可がおりずに困っていたけれど、
邱先生なら問題を解決していただけるんじゃないかという話です。
果して日本人の業者を引率して台湾入りをしたところ、
この話はすぐにまとまって私の生まれ故郷である台南市に
四町歩ほどの土地を買って台湾健康食品の工場を設立しました。

当時としては立派な設備を持った工場で、
養豚業者から豚を仕入れてハム・ソーセージの原料として
日本に輸出したのですが、あとで考えて見ると、
原料を供給する業者はお金を儲けさせてもらえない立場なんですね。
10年、董事長をやりましたが、
無給の上に10年間に配当は1回しかありませんでした。
その間に本社の社長さんも他界したし、
10年目くらいに口蹄疫が発生して
日本へ輸出した商品は全部焼却という目にあわされました。

しかも向う5年間、輸入禁止ということになって
日本人スタッフは全員日本に逃げて帰り、
逃げるに逃げられない董事長の私だけが
400人分の退職金を支払う破目におち入りました。
もう10何年も前のことですが、
私が一人で6億円あまり支払った記憶があります。
そんな私が肉屋の株を買えと大きな声をあげられるものでしょうか。


←前回記事へ

2011年9月22日(木)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ