中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第4219回
不動産はふだん忘れるくらいでないと

戦後の日本で無一文から高度成長がはじまると、
働く人の所得が年々ふえて、
そのお金がマイホームづくりに向かったので、
猛烈な土地の値上がりがはじまりました。
私が香港から郵便小包で物を送ってお金儲けをしていた頃、
新宿の歌舞伎町の土地はまだ1坪が1000円でしたが、
それがバブルのはじける寸前は1億円にもなったのですから、
土地の値上がりが如何にすさまじかったか、
おわかりいただけると思います。

しかし、日本がドルを稼ぎすぎてバブルがはじけると、
坪1億円まで暴騰した土地が
10分の1まで買い叩かれたのですから、
土地で稼いだ人より破産した人の方が
ずっと私たちの記憶に残っています。
その後は産業界が元に戻るのに16年もかかりましたから、
不動産で大儲けした人より
不動産でひどい目にあった人の方が目につきます。

さて、そうなると、
不動産は本当に財産としてあてになる存在なのか、
その上、相続税の対象としてガッチリ捕捉されるので、
はたして新しい投資対象として有望なのかと
首をかしげる人も少くはありません。
ましてや昨今のように国が財政困難におちいって
増税の対象になることは先ず間違いないとなると、
自分の住む家は仕方ないとしても、
投資対象としての不動産の魅力は
かなり後退したと見て先ず間違いないでしょう。

にも拘らず、次々と仕事を変え、
気がついて見たら、かつて有望な新規事業として手がけた
10指にあまる事業はすべて整理してしまい、
辛じて何とか手元に不動産だけが残った老後の自分を見ると、
さて不動産をどう考えたらいいのでしょうか。
一頃、不動産が足手まといになって
「不動産とはそれをもったら
自分が身動きできなくなる財産のことだよ」
と冗談を言ったことがありますが、
年をとって身体さえ自由に動けなくなると、
不動産は「不動尊」のお使いのように見えてくるのです。
そうは言っても仕事をやっている時は忘れているくらいでないと、
不動産は手元に残っていてはくれませんが。


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2011年9月28日(水)

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