| 第24回著名商標は商品の枠を飛び越えます
 前回ご紹介しました最高裁で示された商標類似の判断基準は、「『同一又は類似の商品に使用された』商標の
 外観、称呼、観念を比較してみて、
 取引者に与える印象や連想などを総合的に判断する」
 というものでした。
 もし、商標が著名でなければ、商標の類似は、トレードマークが同一
 又は類似と言えるかどうかという点のみならず、
 商品(又は役務)が
 同一又は類似と言えるかどうかという点と併せて
 判断されることになります。
 これは、意匠がデザインと物品とのセットで登録される点と
 少し似ています(第13回ご参照)。
 ところが、商標が著名な場合は、商品(又は役務)同士が類似かどうかといった議論をすっ飛ばして
 その威力を発揮する局面がいくつも出てきます。
 例えば、後から出願してくる者に対して、
 商品(又は役務)が同一又は類似でなくても、
 その登録を阻止してしまうことがあります。
 これは、未登録商標であっても著名商標であれば、
 後の出願を排除する力を持ちます。
 これは、次のような理屈をもとにしているのです。以前、著名な登録商標として例に挙げた「ソニー(SONY)」ですが、
 もし、皆さんがスーパーで買い物をしていて
 「ソニービール(SONY BEER)」というのを見つけたとしたら、
 どう思いますか?
 きっととっさに
 「えっ、あのソニーが、
 ついにビールまでも販売することになったの?」
 と思われるでしょう。
 著名な企業であれば、多角的に事業展開をしていることも多いので、
 需要者(消費者)の目から見れば、
 それがたとえ
 これまでには馴染みのなかった商品に使われたものであっても、
 何らかの関連があるのでは?
 と思ってしまうものなのです。
 ですから、商標法はこのような事態を想定していて、著名商標の保護をより厚くしています。
 上の例で言えば、「ソニー」というトレードマークを
 「酒類」に限って使用しますので
 どうか登録を認めてくださいと言っても駄目です。
 では、黙って使用できるかというと、
 これも無理だと思ってください。
 著名商標は、普段使用しない商品についても
 防護の目的での登録が認められており、
 こうした防護標章登録に基づいて、侵害とみなされてしまいます。
 このように、商標法では、累々と積み重ねられた営業努力によって築かれた
 「特に大きな信用」は、
 さらに厚く保護しますという考え方を採用しています。
 これも商標法に特有の特徴です。
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