| 第26回お持ち帰りですか?お召し上がりですか?
 第22回で「大森林事件」をご紹介しましたが、指定商品について少し触れました。
 つまり、指定商品というのは、
 トレードマークの使用対象となる商品の品目のことで、
 商標登録はトレードマークと
 指定商品(又は指定役務)とのセットで登録されます、
 とご説明したのですが、
 「指定役務」の「役務」は、サービスのことです。
 商品と役務(サービス)とではどう区別されるのでしょうか?
 まず、商品は、取引の対象として流通過程にのる物(ブツ)です。百貨店に行って洋服や産地直送の名産品を買ってくるとか、
 インターネットで書籍や商品を取り寄せるといった場合に、
 消費者の手元に渡る物が商品です。
 これに対し、役務はサービスのことですから、通信業者と契約して携帯電話で通話サービスを受けるとか、
 金融機関に行って
 お金の預け入れや振込みのサービスを受けるといった、
 商取引ではあるけれども目には見えない、
 顧客に対して払われる労務や便益ということになります。
 もっと分かり易い例を挙げると、コーヒーショップで、「お持ち帰りですか?」
 「お召し上がりですか?」というのがありますが、
 「お持ち帰り」するコーヒーは商品で、
 その場でコーヒーを「お召し上がり」させてしまう提供行為は
 サービスということになります。
 ですから、コーヒーショップが、
 持ち帰りも可能な自己の商品(コーヒー)に使用する
 商標の登録を行おうと思ったら、
 原則として、指定役務「コーヒーの提供」と
 指定商品「コーヒー」との2つの指定を行う必要があります。
 商標法の目的とするところは、取引される商品やサービスに出所の混同などの混乱がおきて
 消費者が不利益を被らないようにするためですから、
 商品と役務(サービス)という2つの概念を導入したのも、
 単にトレードマークが似ているというだけでなく、
 どんな商品やサービスに使用されているかをも考慮し、
 より適切に取引秩序を図っていこうとする枠組みのひとつなのです。
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