知的財産ってわかりますか・中村佳正

無から有を生みたい人、必見

第70回
特許で携帯業界を制したクアルコム社

携帯電話業界において、特許で最も成功した企業は、
「クアルコム」という会社です。
皆さんがお使いの携帯電話がCDMA方式の端末ならば、
機器の裏側などに
「QUALCOMM 3G CDMA」などと書かれていると思います。
この会社は、CDMA方式の携帯電話用のチップを
ほぼ独占的に供給してきた会社で、
多くの関連特許を持っています。
面白いのは、
クアルコムがCDMA方式の基本発明を行ったというのではなく、
むしろ数あるCDMA方式のうちの1つを
米国において標準化したということです。
つまり、クアルコムが有する特許の多くは、
CDMA方式の応用特許ということです。
これまでにも幾度とお話してきましたが、
技術標準に準拠させることで
ライセンス料の支払を免れ得ないようにする戦略の典型と言えます。

もともと、クアルコム社は、
1980年代半ばにサンディエゴで設立されたベンチャー企業でした。
創設者は2人いますが、
当時主として軍事目的での研究が進められていたCDMA技術を、
民間に転用するためにこの会社を興しました。
自由な気風をモットーとし、世界中から技術者を集め、
米国におけるCDMAの技術規格を次々と提案していきます。
もちろん、
並行してこの規格技術を実施するための特許を抑えていきました。
これらの特許は、
クアルコムが供給する約1cm四方のチップに集約されています。
その数は、なんと数百件に及びます。
以前、携帯電話は特許のかたまりだと申しましたが
第5回ご参照)、
クアルコムの技術を採用するだけで、
小さなチップに凝縮された
数百件分の特許料を支払わなければならないのです。

そして、特許料の支払は、チップの価格に対してではなく、
携帯電話機全体の工場出荷価格に対して
何パーセントという基準で決められたようです。
さらっと申しましたが、
これは国内のちょっとしたメーカーになると、
月に数億円もの支払になる勘定です。
つまり年間数十〜百億円規模にはなるわけで、
たった1社からこれだけの特許料をとるとなると、
全世界規模でみると・・・。
一時期、年商4000億円にも達したそうですからたいしたものです。
もちろん、売り上げの多くは特許料収入でした。

あまりにも見事に特許で成功した例として、
研究の価値がありそうですね。


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2008年1月29日(火)

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