知的財産ってわかりますか・中村佳正

無から有を生みたい人、必見

第116回
北京の知的財産事件簿

中国では、
現時点で意匠出願が特許・実案を抑えて一番多いというのは、
前回ご説明した通りです。
この事実は調べてみて初めて分かったのではなく、
調べてみようと思ったあるきっかけがありました。

以前、北京の大手知的財産権事務所の方が
代表者を含めて何名かでうちの事務所にこられました
(お名刺には「知識産権代理事務所」とあります)。
事務所代表者の方は、
中国特許(専利)法の制定にも関わられた大御所だそうですが、
若いときにうちの事務所で何年か修行されたとのことで、
懐かしみ深い面持ちで親切丁寧にお話をして下さいました。
併せて、お供で来られた非常に優秀な若手弁理士が
北京の特許訴訟事情をレクチャくださり、
いま一番多い訴訟は意匠権侵害事件だということだったのです。
商標権侵害事件よりも多いとのことでした。

実際、商標権侵害のケースでは、
侵害される側が著名な商標権者でなければ
訴訟沙汰にはならないでしょうから、
訴額が大きくて世間を騒がせやすいとしても
案外件数としては絞られてしまうのかなとも考えられます。
そうすると意匠出願の件数ってどれくらいなのかな
と思って調べたのが前回ご報告した数字です。
やはり、特許や実案よりも
見た目に訴え易い案件という認識なのだと思います。
それに、侵害される側が著名な商標権者である商標権事件にしても、
商標権者が外国法人の場合は訴訟を起こして懸命に働きかけて
やっと馳名商標に認定されるという程度です(第25回ご参照)。

戻しますが、意匠という外見上の判断なら、
模倣品問題にも直接対処できます。
定性的な数字ですが、
北京での知財訴訟における外国企業の勝率は6割程度とのことです。
それから、真偽の程は不明ですが
外国企業にあまり勝たせると北京の裁判官は出世に響くらしく、
外国企業が勝ちそうなときは
判決にしないで和解をすすめてくる場合があるそうです。

こういう場合には、
裁判官の『面子』も立てなければならないということでしょうか。


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2008年5月15日(木)

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