「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第7回
銀座の隠れた おでんの佳店

銀座にはすしの名店が目白押し。
すし職人たるもの、
いつの日か銀座に店を構えるのが夢だろう。
すしのかげに隠れて、意外に目立たぬのがおでん。
銀座はまた、都内随一のおでんの名所でもあるのだ。
高級店の「やす幸」、庶民的な「お多幸」のほかに
「ぎんざ力」、「四季のおでん」、「田中」、「かめ幸」、
「おぐ羅」など、ゾロゾロと名前が挙がる。

そんな中で気に入りは「江戸源」。
新橋にほど近い数奇屋通りに、仕舞屋風の佇まい。
「おでん いろいろ それぞれ 150円」
人情味あふれる店先の貼り紙に心もぬくもる。
リピーターではないから過去数回しか訪れていない。
でも好きな店なのだ。

およそ1年ぶりで暖簾をくぐると、
店内には相も変わらずレトロな空気が
おでんの湯気と一緒に漂い、昭和30年代の匂いがする。
「三丁目の夕日」さながらだ。
梅雨の合間、開け放った窓からは涼しい風がそよぎ込む。
まだ8時半だというのに
TVのナイター中継は早くもお立ち台。
和田と松中が2人並んでニッコリと微笑んでいる。
しっかりしろよ、ジャイアンツ!

われに返ってコップに注いだビールを飲み干す。
穴子煮凍り・ずいき白和え・胡麻豆腐、
気の利いた突き出しがうれしい。
才巻き海老のにぎりまで1カンお出ましだ。

評判の高い刺身は、鰹が売り切れ。
それではと、平目に〆鯖をお願いする。
この頃には酒も芋焼酎のロックに移行。
奥歯を抜いてきたという相棒は大事をとって水割りだ。
えんがわ付きの平目は本わさびと穂じそで。
〆鯖は脂ノリノリ、わさびではとても歯が立たないが、
そこはおでん屋、卓上の練り辛子でやっつけた。

ちくわぶ・白滝・大根・玉子、
きんちゃく・つみれ・ごぼう巻き。次々に平らげる。
おでんと並ぶこの店の名物は
客との会話を盛り上げるお婆ちゃん。
花街だった頃の新橋の話をさせたら独壇場だ。
この夜はちょいとお疲れ気味か、
コックリコックリと舟を漕いでいた。

リピーターでもないくせに、どうやら近々再訪の予感がする。
目当てがおでんではなく、キープしたボトルでは本末転倒だ。
われながら、少々浅ましい。


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