「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第10回
ウォール街の朝食

最近はトンと朝食をとらなくなった。
いつの間にか昼と夜が逆転とまではいかぬものの
ずいぶんスライドしてしまっている。
第一食はおおむね11時半。
飲食店のランチタイムが始まる時間だ。
まれに朝の9〜10時頃、空腹に耐えかねて
コーヒーショップのサンドイッチ、あるいは喫茶店の
モーニングサービスで済ませることも。
しかしそれでは取材のネタにはならないし、味気ない。
そんなときには築地の魚河岸に出向いている。
場内・場外を問わずイートイン可能な店はすべて訪れた。
ときには千住大橋の足立市場までアシをのばすことも。
勝どき・入谷・小伝馬町・玉の井あたりの大衆食堂にも
お世話になっている。

振り返ってみれば、キチンキチンと
朝食を食べていたのはニューヨーク時代。
毎朝8時前にウォール街のオフィスに入り、
デスクに着いたら、なじみのデリに電話を入れる。
「腹が減っては戦(いくさ)が出来ぬ!」
朝メシのデリヴァリーを頼むのだ。
注文するのはいつも近所の「Stage Door」。
気に入りの定番メニューは下記の通り。

バターを軽く塗ったビアリーのトースト
3分ボイルの半熟ゆで玉子
サッと炒めたボローニャソーセージ
缶入りのパイナップルジュース

これが基本で、ビアリーがイングリッシュマフィンに、
ソーセージがベーコンに、それぞれ代わることもある。
ちなみにビアリーというのは
レバノンで好まれるベーグルのこと。
ベーグルほどには質感の重さがなく、軽いタッチで
日本のトーストに近いのだ。香ばしくてとても美味しい。
東京では見かけぬが、久しぶりに食べてみたい。
ソーセージはほとんどバターを使わずに
炒めるというより、軽く温める程度が好き。
ベーコンもアメリカ人好みのカリカリは苦手、
「Not too much cooked」
でお願いする。

ある朝、受話器の向こうの聞きなれた声は
電話番のアンディだ。
注文の確認を終わった彼が唐突に訊いてきた。
「J.C.! Are you from
 Hawaii?]
何のこっちゃい? 逆にこちらがたずねれば、
アメリカじゃ、ハワイの人間くらいしか
パイナップルジュースは飲まんのだと。


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