「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第11回
おおげさだけど Wの悲劇

不幸な光景を目撃してしまった。
場所は麻布十番の天ぷら店「畑中」。
月刊「おとなの週末」の連載コラムの取材で訪れたのだ。
「日本の誇る 五大どんぶり」と題して
天丼・うな丼・かつ丼・親子丼・鉄火丼、
日本を代表する5つのどんぶりにおける
それぞれのベストを特集するため、天丼の試食に赴いた。

開店まもない12時10分に到着すると、すでにほぼ満席。
カウンターにどうにか1席だけ空きがあった。
昼のメニューは、天丼(1260円)、
特製天丼・天ぷらとご飯(各1575円)、
天ぷらコース・椿(3990円)の4種類。
天丼プラスかき揚げの特製天丼を注文。

入店後、30分経過した12時40分に悲劇が幕を開ける。
待ちくたびれた隣りのカップルの女性のほうが一言。
「ちゃんと12時に予約してんですよぉ〜!」
引き取った店主が「入られた順番でお出ししてますので」
「あとどのくらいかかるんですかぁ?」
「ごはんをお出しするまでにあと1時間ほどは・・・」
今度はカップルの男性が
「時間がないんで、すいませんけど」ここで2人は退席。
やりとりが筒抜けの店内に、やるせない雰囲気が拡がる。
美味しい天ぷらを夢見て、せっかくコースを頼んだ挙句、
結局は昼休みを無駄にしちゃったふたり。
イライラがつのって、帰りに喧嘩しなけりゃいいけれど。

そんな空気の中、やっとこさ目の前に置かれた特製天丼。
小海老2連の筏(いかだ)が2つで計4尾、
きす・いか・なす・ピーマン・ヤングコーン・
小海老かき揚げの陣容は
小海老ばかりに偏りすぎてバランス感覚に欠ける。
天ぷらの片面だけを丼つゆに浸す丁寧なシゴトも
時間に制約のある昼メシどきには
返ってわずらわしいと、目に映る。
これでは「おとなの週末」の天丼代表に選出できない。
夜の天ぷらのすばらしさを知っているだけに
胸を弾ませての訪問だったが、残念ながら見送りだ。

つい6時間ほど前のこと。
W杯の日本代表がブラジルに惨敗しての予選リーグ敗退。
首の皮1枚どころか、髪の毛1本ほどしか
残らなかった状況下とはいえ、
あまりの実力差に観ていたほうのショックも甚大、
眠い目をこすりながら、虚しく迎えた東京の夜明け。
生きてるうちに日本のW杯制覇を見届けたいと願ったが、
今はただ、自分の甘さを苦く冷たく笑うほかにすべがない。
いかん、いかん、弱気はいかん。
今後の日本代表の再生を祈りつつ、
明日からまた、旨い天丼を探し求めて街に出なければ、、、


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