「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第18回
メナムを埋める女性たち

仏教国タイの西部を貫くように流れるメナム川。
バンコク市内ではチャオプラヤ川と呼ばれるので
てっきり多摩川の下流を六郷川と呼ぶが如しと
受け止めていたが、それはアワテモノの勘違い。
実際は「メナム」の言葉自体が「川」のことだったのだ。

「メナムのほとり」。
女性的に柔らかいタッチの店名が気恥ずかしい。
タイのナンプラー、ヴェトナムのニョクマムなど
魚醤を好むタチでもないから
東南アジア系レストランは率先して訪れるほうではない。
一方、秋田のしょっつる、石川のいしりが好きなのは
地酒や地元の食材との相性の良さが実を結ぶためだろう。

ある土曜の昼下がり、どういう風の吹き回しか
ツレの同意もあって、ヒョイと入った「メナムのほとり」。
前夜が新橋の小料理屋、当夜は銀座のイタリアン。
合間に目先を変えたくなったらしい。

店内はザッと25人ほどの客で埋まっている。
それも老弱の違いはあるものの、女性ばかりで
男はたったの2名というアンバランスな景色。
女性に埋もれるハーレム状態だが、
こういうのはベツにうれしくもなんともない。

数種類のランチセットから2つ選んでシェアすることに。
小海老の姿があまり見えないトムヤムクン、
ゆで豚・豚挽き・もやし・ピーナッツの入った汁ナシ麺、
タイ風の高菜の炒めもの、具の少ないミニ炒飯、
赤唐辛子ベースのタイ風チキンレッドカレー、
キレイに食べ終え、ベチャッとなった炒飯以外は
みな予想を上回る及第点。
残念だった炒飯にはジャポニカではなく
インディカ米を使ってほしかった。
それも今話題のジャスミンライスというヤツを。

夜に再訪し、本格的料理の数々をあらためて味わう。
レモンの風味にプリックキヌー(小青唐辛子)の辛味と
ナンプラーのコクが一体のヤムウンセン(春雨サラダ)、
空芯菜に似たタイの青菜パプーン炒めはパットパック、
パイマックルー(こぶみかんの葉)が香る白身魚の
さつま揚げがトートマンプラー、
レモングラス、カー(タイ生姜)、カピ(小海老の塩辛)、
にんにく、ココナッツミルク、青唐辛子などで
牛肉と茄子を煮込んだビーフグリーンカレー、
ハズレは1つとしてなかった。
本場の食材をふんだんに使い、化学調味料を極力排する
その姿勢も高く評価したい。

この店の上を行く東南アジアのエスニック料理店は
東京中を睥睨しても、簡単には見つかるまい。


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