「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第21回
鮨屋二軒 百万石の 城下町  (その1)

北陸シリーズも金沢までやってきた。
桜サクラとしつこいようだが、兼六園の桜がキレイ。
この城下町でも、目的は桜にあらず、
狙いは評判のお鮨屋さん二軒である。

市内中心部からクルマで10分ほどの「千取寿し」と
片町の交差点から徒歩2〜3分の「小松弥助」だ。
東京に住んでいても、金沢に明るい食いしん坊なら
それぞれにご存知の方が多いだろう。
地元で情報を仕入れてみると
ホテルのマネージャー、タクシーの運転手さん、
みな一様に口を揃えて、この2軒を誉めそやす。
まるで金沢の誇りとでも言わんばかりに。

夕刻、金沢駅前の「都ホテル」にチェッックイン後、
すぐさまクルマを走らせ、「千取寿し」に向かう。
店先に立ち、風格と品性が同居する佇まいに
否が応でも期待感が高まる。
こんな鮨屋は東京でも滅多にお目に掛かれないぞ。

ファサードほどではないにせよ、店内もスッキリ。
まだ宵の口、客はわれわれ2人きりだ。
さっそくスーパードライで地モノを中心につまむ。
白身のきじはたは、まずまずながら
平目や真子がれいの上をいくものではなかった。
ばい貝と鬼海老は生でいただく。
やや大ぶりの鬼海老は
見かけによらず繊細な味わい、これは二重丸。
白く平たく美しい万寿貝は生と焼きの両方で。
どちらも楽しめたが、焼き万寿に軍配。

福正宗の燗をお願いして、にぎりを。
いきなり最初の平目でズッコケた。
つまみのときには100%本わさびだったのが
微妙にニセわさを混ぜて、にぎってきた。
指摘して改めさせると、つけ場に緊張感が疾る。
18時を回って店内は立て込んできており、
いつのまにやら2人だった職人が4人に増えている。
彼らの視線を一身に浴びながらの仕切り直しだ。
赤いかがなかなか。縞海老は本日のにぎりのベスト。
スペイン産本まぐろの赤身は可も不可もなく、
赤貝と穴子はそれなりに合格点。

素材の質は高い。特に海老と貝類が充実している。
混ぜわさは痛恨の極みだが、
この城下町には、違いの判る客がいないのだろう。
何よりも不快であったのは
経営者の一族だろうか、店のお姉さんが
再三つけ場に立ち入って、職人と話し込むこと。
それも普段着同様の出で立ちで。
事ここに至り、品格ある老舗の品行の乱れを憂う。


←前回記事へ 2006年7月31日(月) 次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ