「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第23回
気に入りワインを持ち込んで  (その1)

気の合う仲間やステキなパートナーに恵まれて
美味しい食事を楽しんだあと、
勘定書きを見てカックンとくることは
誰しも経験がおありでしょう。
居酒屋は言うに及ばず、
そば屋・うなぎ屋・洋食屋あたりならば、
おおよその見当もつくし、目の飛び出るようなことはない。
やはり恐いのは、鮨屋とフレンチだろう。
鮨は高価な食材によるところが大きく、
フレンチはワインにその因がある。

よほどの大酒飲みでもない限り、
鮨屋では飲もうと飲むまいと、勘定にそれほどの差はない。
しかしワインは、そうは問屋が卸さない。
殊に高級店になればなるほど、値付けが右肩上がりで、
非良心的な方向に突き進んでゆく。
だからといってランチはともかく、ディナータイムに
グラスワインではいかにも侘しい。
そんなときに強い味方になってくれるのが
ワインの持込みを認めてくれる店だ。

銀座の「ad Lib」。持ち込み料は一律3150円。
フレンチの「ル・マノアール・ダスティン」の姉妹店で
その地下にあり、フレンチを基本としながらも
洋食の要素を取り入れ、和の匂いも漂わせた
無国籍料理を提供している。
本家のアミューズ・グールとしておなじみの
ブーダンノワール(豚の血入りソーセージ)が1本105円。

前任の女性シェフは独立して、六本木の旧テレ朝通りに
「ボン・ピナール」をオープンさせた。
それに伴い、スーシェフがシェフに昇格したが、
名物料理は変わることなく、肉汁あふれるハンバーグ。
直近の訪問では、ホワイトアスパラの春菊ソース、
平貝ソテーのサラダ仕立て、鱧のエスカベッシュ、
すっぽんとへちまのキッシュ、あいなめのポワレ、
鯨肉タルタルのベーコン巻き、タリアテッレ・ボロネーゼ、
カレーライスなどを大勢で分け合った。
直球と変化球を取り混ぜた皿の数々は
食材同士の相性を見極めたユニークな組み合わせが特長だ。
ただ1つ、うなぎ&リードヴォーのクロケットだけは疑問。

持ち込んだ北イタリアはピエモンテ州の赤ワイン、
バルバレスコ・チェレット・アジィは
どの料理に対しても協調性を発揮しつつ、
しなやかにして鋭角的な持ち味をも主張する。
ナポリのアリアニコ、シチリアのネッロ・ダーヴォラに
代表されるがっしりと重厚な骨格を持つセパージュよりも
ネッビオーロの繊細なキレ味が、心から気に入っている。
  =つづく=


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