「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第31回
蓮を煮るときゃ 蓋するな!

神楽坂をぶらぶらしていて
偶然発見した「かぐら坂新富寿司」。

JR飯田橋駅前の神楽坂下から
早稲田通りをエッチラオッチラ上っていって
肉まんがウリの中華料理店「五十番」の角を
右折すると本多横丁。

横丁に足を踏み入れると、すぐ左手に
J・レノンとヨーコ・オノが現れたという
うなぎの「たつみや」がある。
いつも売り切れなのか、肝焼きにありつけないのが大不満。

「たつみや」の先、2本目の路地に
「新富寿司」の看板を見つけたのは4年前のこと。
ふらり、誘い込まれるように暖簾をくぐると
なんともいい感じの庶民的な鮨屋さんだ。
以来、リピーターでもないのに時折り足を運んでいる。

齢八十も半ばにならんとするお婆ちゃんと若女将、
孫娘とその弟の4人で切り盛りするチョー家族的な店は
みんな性格のよい人たちで、人情味にあふれかえっている。

鮨ダネに傑出したものがあるワケではない。
それでも小肌・春子・穴子には
昔ながらの江戸前シゴトが施されている。
ひかりものと焼きたら子で一杯やるのが常ながら
婆ちゃんの手になる小料理の数々が、何といっても楽しみ。
江戸風の濃い味付けもしっかりと、
こうでなくっちゃ江戸っ子は、相好を崩さない。

先夜のお通しに出た蓮根の煮もの。これが旨かった。
関西風の、蓮だか慈姑(くわい)だか判らんような
モッコリしたのとはベツの次元の食べもので
歯にシャキシャキと快く、甘辛の塩梅も申し分ない。
蓮って、こんなに旨いものだったっけ?

なにやらこれから表通りでは
阿波踊りが始まるという夜のこと。
立て込んでいた店内も一段落して
ビール好きの婆ちゃんが隣りの席に座る。
われわれ2人、しばしの間、差しつ差されつだ。

煮ものをほめると
「そうでしょ?蓮煮るときゃ、蓋しちゃダメなのよ。
今の若い人はみんな蓋しちゃうから、
歯ざわりが消えちゃうのよ」――ふ〜ん、なるほどネ。
おあとは煮魚と精進揚げだ。ぬか漬けももらっておこう。

8月いっぱいは改装で休業中、9月1日に新装開店を迎える。
若女将と孫娘がこの機会に勇退するのが、なんとも残念。
あとは孫息子と婆ちゃんの二人三脚で続けていくそうだ。
行くも2人、残るも2人。
4人の行く末に、幸多からんことを!


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