「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第33回
ホンモノの仔牛が食べたい!  (その1)

麻布十番の「ピアット・スズキ」。
シェフは同じ十番の「ヴィーノ・ヒラタ」の出身。
「クッチーナ・ヒラタ」の階下にあるカジュアルな
姉妹店が「ヴィーノ・ヒラタ」。

聞くところによると、シェフは
「クッチーナ」のオーナー夫妻の秘蔵っ子であったらしい。
「クッチーナ」といえば、エキセントリックなマダムが
何かにつけて話題になって、その評判も毀誉褒貶。
多少のクセはあるとしても、料理の知識、客あしらい、
ともにプロらしく、彼女に悪い印象はまったく持っていない。

東京のイタリアンではまったく見掛けることのない
パイラルドという肉料理がある。
薄くたたき延ばした仔牛や鶏の網焼きだが、
やはり「クッチーナ・ヒラタ」のメニューにもなかった。

ある夜。マダムに
「仔牛のパイラルドできますか?」――こう訊ねると
「お作りします!」――即座に答えが返ってきた。
まさにクイック・アーンサー。
料理人を支配しうるオーナーなればこその
即答だとしても、知識がなければこうはいかない。
このときにこの人はホンモノだと実感。

さてさて、その「ピアット・スズキ」。
数年前に食べた仔牛のTボーンステーキが
強く印象に残っている。米国産とのことであった。
欧米では穀物を与えずにミルクだけで育てた
いわゆる乳飲み仔牛は食肉の最高峰にランクされている。

ひるがえって、わが日本。
需要がないから、供給もされないのかも知れないが、
仔牛肉にはほとんどお目に掛かることができない。
1億総グルメと言われて久しいのに
仔牛の不在は何とも淋しい限りで
牛肉は霜降りに限ると、妄信している人が多すぎる。
すき焼きもしゃぶしゃぶも、サシの入った和牛は
2〜3切れ食べればじゅうぶん。
食べ過ぎると、あとで胃もたれに悩まされる。

USビーフの輸入が禁止されてからは
トンとご無沙汰だった「ピアット・スズキ」。
7月末に輸入が再開されたので
久しぶりに出かける気になった。

4人組につき、様々な料理をとことん味わえる。
エビスしかなかったビールの小瓶も
スーパードライが加わり、こんなところにも進歩のあとが。
ワインは白がガヴィ。これはほかの3人に任せる。
赤は2本で、カンタルーポのゲンメ‘99年と
トラヴァリーニのガッティナーラ・リゼルヴァ‘98年。
さあ、準備万端でいざスタートだ。
     =つづく=


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