「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第34回
ホンモノの仔牛が食べたい!  (その2)

最初の突き出しは冷たいトマトのジュレ。
フレンチではアミューズ・グール、あるいは
アミューズ・ブーシュと呼ばれる口慰み。
イタリアンではイニッツィオという。

ときには小さなティースプーン1杯だけで
それこそ子どもの頃に飲まされた
小児マヒのワクチン程度のものもある。
「馬鹿にするな!」とお怒りのお父さんを
お見かけすることもしばしば。

それでもアンティパストが出る前の
空白を埋めてくれるのも確か。
ベター・ザン・ナッシングと
笑って済ますのが大人というものだ。

アンティの1皿目は
あおりいかと唐墨とフェンネルのサラダ。
このいかはネットリと舌にからむ食感が特徴。
厚い身は生のまま、不揃いのゲソは軽くあぶられている。
まずは無難なスタート。

2皿目は蒸し穴子のミルフィーユ仕立て。
蒸しといいながら焼き色もついて
一流のうなぎ屋の白焼きのレベルに達している。

パスタは最後にいただく主義。
セコンディを先にお願いして、初めは魚介料理から。
駿河湾で揚がった立派な赤座海老を各自1尾ずつ。
レモンを絞って頬張ると、穏やかな甘みが口内を占領した。

ここで本日の主役の登場。
茨城産日立牛だという仔牛のTボーンステーキは
赤みがさして、これはすでに穀物を口にしている証拠。
ミルクの香りにも乏しく、やや残念な結果となった。
まだUSビーフの解禁から日も浅く、
市場にはそれほど出回っていないのかもしれない。
あぁ、ホンモノの乳飲み仔牛が食べたい!
豪州産もイマイチだし、もう少し辛抱するか。
むしろこの夜は粒マスタード&タラゴンのソースの
仔羊ローストがとてもよかった。

最後にパスタ4連発。
小はまぐりのスパゲッティ・ヴォンゴレ。
仔牛頬肉とポルチーニのガルガネッリ。
夏トリュフのタリオリーニ・カルボナーラ。
ほろほろ鳥とフォワグラのラヴィオリ。
う〜ん、パスタは大満足とまではいかないな。

ドルチェはパスしたものの、飽食の結果として
支払いは予想をはるかにオーバーする。
場外ホームランを打たれたピッチャーのような心境で
帰路につく愚か者が4人、夜霧の街に消えてゆく。


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