「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第35回
のんべい横丁のお母さん

若者の街というより
ぶっ飛んだ若僧の街と呼ぶにふさわしい渋谷。
出かけるたびに、いやあ疲れること、疲れること。
文句を言いつつも3ヶ月に2回は出かけなければならない。
長いこと髪の毛を切ってもらっている美容師さんが
表参道から渋谷に異動になり、そのアオリを食らったのだ。

気に入りの飲食店がほぼ皆無のエリアだから
サッパリした頭でブラブラしていても
気持ちがちっとも弾んでこない。
なんてつまらん街なんでしょうね、渋谷って街は。

そんな中で唯一、心惹かれるのが
駅に程近い線路脇にある「のんべい横丁」。
渋谷だけに、下町のような情緒には乏しいが、
映画のセットみたいなレトロな一角は
そぞろ歩くオジさんたちの心を和ませる。

この横丁に焼き鳥の「鳥重」がある。
店の前の人だかりを横目に店内を覗いてみると
狭いところに客がスシ詰め。
意外に女性同士のグループが多い。
名声を噂に聞いていたので、訪問を決断したが、
どうやら誰かの紹介が必要らしい。

ツテを頼って予約を入れてもらい、3人で出かけた。
9人ほどでいっぱいのカウンターに
11人も入っていっぱいいっぱい、身動きすらできない。
焼き鳥を食う立場の客までブロイラー状態だ。
切り盛りするのはシレッとしていながら
人のよさそうなお母さん1人きり。

いろいろと店独自のローカルルールが設定されている。
注文と会計はグループの代表者のみが
取り仕切らねばならない。
最初の注文はお母さんに「何にいたしましょう?」と
聞かれて初めて通すことがで可能となる。
焼き鳥の頼みすぎには即刻、お母さんの教育的指導が
「そんなには食べられないのヨ」と与えられる。
酒の飲みすぎもまたしかり。

酒はキリンのクラシックラガーに芋焼酎のいも神。
初っ端に鳥のささみ&レバ刺しを
生姜・にんにく・胡麻油でやって、これはごくフツー。
続いて早くも大串の焼き鳥がドーンと来た。
レバを塩とタレの両方で味わったあとは
すべて塩で、ハツ・正肉・合鴨・しっぽ。
計6本を3人で分け合い、ハツとしっぽが双璧だった。
ほかには、きゅうりと大根のぬか漬けのみながら
3人で7600円は破格。これで若者の多い理由が判った。

お母さんの上品な言葉遣いと話しのテンポ、
この会話術あってこそ、客はこの狭い空間に耐えられる。


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