「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第36回
もはやサンマは 秋刀魚ではない!

梅雨の真っ只中の7月上旬に
北海道の釧路でサンマの初入荷があった。
「えっ?サンマって秋の魚じゃなかったの?」
誰しも抱くこの疑問、当然です。
でもこんなことで驚いてはイケません。
今年、初めて新サンマをいただいたのは
何と4月4日の昼どきであった。
まぎれもなく、冷凍ではない生の新サンマだ。
ところは九段下交差点の北東、
徒歩2分ほどの和食店「むらかみ」。
根室の港に揚がったものだという。

さんま塩焼き定食は800円。
味付け海苔ときゅうりのキューチャンみたいなのと
しじみの味噌汁にごはんが、その全容。
これに冷奴(110円)と納豆(80円)を追加する。
店先に「本日の味噌汁・しじみ」の札が出ていて
これは優れたアイデア。お客のためを思っている。
味付け海苔はキライだが、お札に免じて許すとしよう。

さて定食の主役の焼きさんま。
脂のノリもホンノリと、かつおで言えば初がつお。
これが滅法旨かった。地球温暖化の影響とはいえ、
こんな時期にこんなさんまが食えるとは!
満足感にひたりながら、支払いを済ませ、
ゆっくり九段の坂を上ってゆくと
牛ヶ淵・千鳥ヶ淵・靖国神社、あたり一帯は
桜・さくら・サクラ、薄紅色一色に染まっている。
日本に生まれてよかったけれど、
今日のところは「花より秋刀魚」としておこう。

その4ヵ月後、今度は8月3日の昼下がり。
2〜3日前の涼しさが嘘のような本格的夏日に
日本橋兜町の坂本町公園を通って茅場町へ抜け、
割烹「辰巳」の前を通りかかると
店先に「さんま塩焼き定食 900円」の貼り紙が。
さんまの焼いたのはあの春の日以来、口にしていない。
渡りに舟と、即入店。
この時期ならば、釧路の産に相違あるまい。

定食は、豆腐とわかめの味噌汁、かぶの新香、ごはん付き。
少々ものたりないので、冷奴(100円)も注文する。
小鉢類はほかに、切干し大根・ひじきなどが100円均一。
定食は、刺身・天ぷら・天丼が1000円。
さば塩焼き・とんかつ・アジフライは800円。

焼き上がったさんまは、餌をタップリ食べた様子、
順調に育って、春よりも一回り大きくなっている。
すだちを搾って箸を付けると、ジワリと脂がにじみ出た。
脂のノリはかなりのものだが、けっしてシツコくはない。
はたして夏の釧路も春の根室に負けるものではなかった。
もはやサンマは、秋の刀の魚ではない。


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