「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第37回
昔かたぎの 銀座の居酒屋

虎ノ門の駅近くにある大衆酒場「升本」。
金融界に身を投じた四半世紀前の勤め先(第1回参照)
比較的近所にあったので、ちょくちょく利用した。
別段つまみが旨いワケでもなく、
鯨のベーコンなど、値段相応でヒドいものだったが
とにかく若いサラリーマンには安さが絶対的魅力だった。

銀座1丁目の並木通りに同じ店名の「升本」を
発見したのは4年近く前の師走。
虎ノ門とはうって変わって小ぢんまりとした
店内には新興の居酒屋チェーンとは
まったく異なる穏やかな空気が流れている。
酔客の嬌声に悩まされることもない。

若者はこういう場所には見向きもしないのか
一杯やっているのはオジさん中心。
OLさんなんか見たこともない。
でも、いいんですな、こういう店が。

サッポロの生をグビッと干したら、大関の燗。
正一合で一級酒が350円で、二級なら300円。
世の中、やれ大吟醸だ、純米酒だと
能書きばかりが先走りして、昔ながらの銘柄が
肩身の狭い思いをしている昨今の惨情たるや
目を覆いたくなるほどだ。
そこへいくとこの大関。子どもの頃の懐かしい味が
そのままよみがえるのがうれしい。
いえいえ、想像上のおハナシですってば。

つまみは、新銀杏(400円)、豚もつ煮込み(450円)、
厚揚げ焼き(400円)、かつとじ鍋(500円)、
揚げ茄子生姜醤油(350円)あたりをお願いする。
生モノがほしいときには酢の効いた〆さば(480円)だ。
冷やでやるときには揚げものがいい。
あじフライ・串カツが各400円。

ランチタイムには定食が食べられ、
上記のつまみがそのままおかずに早変わり。
好きなものを注文しておいて
定食セット(200円)と組み合わせる。
ある日は、しじみ味噌汁・昆布佃煮・しば漬け・ごはん。
そこそこのボリュームがあるから昼どきは
お若いのも現れてドンブリめしをかっこむが、
いつも空いている。

店の大将に訊いたところ、
虎ノ門とは親戚筋ながら、まったくの別経営とのこと。
雰囲気がこんなに違えば、さもありなん。
「三州屋」に「ひょうたん」と、銀座も1丁目界隈なら
安くて旨くて気のおけない優良店が居並び、
オヤジの街は何も、神田・新橋と決めつけたものでもない。


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