「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第39回
芸州安芸にも 石松がいた!

所要で広島市へ。この街には縁薄く、
十数年前にちょいと立ち寄り、お好み村で
広島焼きなるお好み焼きを、昼メシ代わりに食しただけ。
辛うじて平和記念公園に行くことはできたけれど。

宿の広島プリンスホテルは港の近く、街の中心地からは遠い。
最寄りのバス停まで徒歩15分。
そこから繁華街までバスで30分はかかるという。
宿泊代をケチッた罰だ。「ええい、ままよ!」と徒歩で出発。

知らない街を歩くのはじつに楽しい。
高校時代の担任は現国の教師で広島の出身。
ことあるごとに、この街を流れる太田川の話を聞かされた。
歩きながら「ふ〜ん、これがその太田川か」と
思ったのは調べてみると、ちょうど原爆ドームの前あたりで
太田川とはたもとを分かった元安川。

天満屋や三越、それにパルコの立ち並ぶ一角に
到着した時は、すでに灯ともし頃。
聞き込みの刑事よろしく、その晩に一杯やる店を物色する。
中央通りと流川通りにはさまれるようにしてあった
新天地公園の真ん前に、日の丸とは正反対の配色の
赤地に白く染め抜かれた「石松」の暖簾を
発見したのは物色を始めて、およそ1時間後。
ホテルを出てから、ずいぶん歩いたものだ。
これでビールがマズかったら、金輪際ビールは飲まない。

さっそくスーパードライの中瓶を1本。
空っぽにするのに3分とかからない。
おあとは宮崎の芋焼酎・心水(もとみ)のロック。
つまみは、最初に珍しいうちわ海老をポン酢で。
伊勢海老を踏み潰したような不細工な容姿は
意外にも愛嬌にあふれて、シンガポールあたりでは
クレイフィッシュと呼ばれるものだ。

そして瀬戸内の賜物・小いわし料理をジックリと。
大き目の真いわし、俗に言う七つ星には
それほどの執着を見せない代わり、
ひしこいわしなど、小さないわしには目がない。
もちろん小さいものなら、真いわしもOKだ。
まずは昆布〆からやると、生臭さなど微塵もない。
次は天ぷら。これは昆布〆の上をいった。
博多名物・屋台でも、こいつがあると必ず注文したものだ。

あとは真鯛の骨蒸し、馬の根とにんにくの茎炒め。
馬の根というのは、馬の大動脈で
コリコリの歯ざわりがなんとも言えない。
ただし、歯の丈夫でない方は避けたほうが無難。

ビール1本、焼酎2杯込みで約4千円。なんともいいお店。
石松といえば、駿州駿河の森の石松。
都鳥一家の謀略により、悲運の死を遂げたハズだが、
芸州安芸によみがえっていたとは知らなんだ。


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