「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第40回
鮨屋も見た目が9割 (その1)

新潮新書の「人は見た目が9割」が売れている。
まだ読んでいないが、タイトルから
「そんなものかなぁ、、、」という実感が湧かないこともない。
でも9割というのはスゴい数字じゃなかろうか。

男は度胸、女は愛嬌、坊主はお経、
なんて言ったものだけれど、同じ見た目でも
男と女は違うんじゃないかしら。
男は多少ブサイクに生まれても、その後の努力や精進で
あるいは幸運が手伝ってくれたりもして
なんとか人生を切り開いていけようが、
女はやはり美しく生まれたほうがずっとトク。

もう誰も話題にしなくなったJ.P.サルトルの実存主義。
男の場合は「実存は本質に先立つ」ようでも
女の場合は「本質が実存に先立つ」ような気がする。
生まれ落ちたときに、幸不幸が決まっちゃっているような。

こんなことを長々とつぶやいていると、またどこぞから
「男女同権の時代に何をネボけたこと言ってんだ!」
そんなお叱りを受けそうだから、もうやめる。

本郷菊坂をご存知の方は多かろう。
近くに樋口一葉が使った井戸なども残っていて
そぞろ歩きに、なだらかな坂を上り下りするのが楽しい。
坂の中腹にある「キッチンまつば」は美味しい洋食屋さん。
ちょいと路地に入ったところで、金魚屋さんが開いている
その名も「金魚坂」なる喫茶店兼レストランはユニークだ。

春日通りをはさんで、菊坂の反対側にあるのが壱岐坂。
こちらは菊坂ほどに有名でもなく、
大通りだから車の往来も頻繁。当然、風情も趣きもない。
その代わりといってはなんだが、この壱岐坂の北側に
心も和むレトロな商店街が走っているのだ。

この商店街の中ほどに、小粋な佇まいを見せる
鮨屋を発見したのは2年ほど前のこと。
散歩といっても、ほとんどが隠れた名店の探し歩きを
その目的としているから、飲食店の店構えには
敏感すぎるほど敏感だ。

ほかのジャンルは食べてみて初めて、その良し悪しが
判るものだが、こと鮨屋に限っては
外見からでも9割がたは見当がつく。
この店を見たときに、これは間違いないと確信した。
暖簾と看板から推し量れる店主のセンス。
整理整頓された店先の清潔感。琴線に触れるものがあった。
まさしくおめがねにかなったワケで
人だけでなく、鮨屋もまた見た目が9割なのである。
さっそく翌週の予約を入れた店の名を「鮨すず木」という。

     =つづく=


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