「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第43回
真夏の夜の 天ぷら三昧 (その2)

薩摩の芋焼酎・げんちもスッキリと旨い。
生産性の低い幻のげんち芋を復刻させて仕込んだものだ。
いつのころからか、日本酒よりも焼酎を好むようになった。
おそらくここ5年ほどのことだと思う。
麦に始まり、米や栗を経て、初めは苦手だった芋に落ち着く。
以来、9割がたは芋を飲んでいる。

さて「逢坂」の天ぷら。
卓上には、塩・おろし・天つゆ・レモンが並んでいる。
緑鮮やかなレモンの皮は国産であることの証明だ。
最初の車海老は他店より二回りほど大きめのもの。
前回は感服した揚げ切りとは微妙に異なる。
コロモにぬめりを感じるのは
引き上げが若干早かったのではないか。
舌ざわりが銀座の「てんぷら近藤」に似ている感じ。
同じ店の同じ職人さんが揚げて、こういうこともあるのだな。

好きではないから、
お好みで食べるときには絶対に注文することのない
グリーンアスパラはこの瞬間しかないというほどに
ピンポイントの火の通し。サイズもちょうどいい。
これは珍しく、美味しくいただけた。
ホクホクの食感が魅力のきすは相変わらずの安定感。
水分の多いこのサカナは昆布〆や一夜干しもいいが、
やはり天ぷらにトドメを刺そう。
フライも捨て難いものがあるけれど
パン粉やウスターソースや千切りキャベツとの相性を
考慮すると、きすよりも鯵に分がありそうだ。

ここで一番のお気に入りの絹さや。
精進揚げでは、いんげんと並ぶ二大好物だ。
ポークソテーやハンバーグの付け合せにも
このどちらかがないと機嫌が悪くなるくらい。
やはりここの絹さやは日本一。
お替わりの衝動にかられるところを辛うじて我慢した。

琵琶湖の稚鮎は、胸びれ・腹びれを立てて揚げられ、
目の前に置かれたときには、まるで泳いでいるかのよう。
ワタの苦みが何とも言えず、げんちのロックに拍車がかかる。
熱々の小玉ねぎには、用心にも用心を重ね、
たっぷりのおろしを乗せ、ほどよく冷めたところに
生醤油をたらしてパクリ。余熱とともに甘みがジワッ。
ここまで食べて、いまだ天つゆには手を付けていない。
大根おろしと生醤油だけで味わっている。これが好きなのだ。

梅肉を包んだ鱧をさらに大葉で巻いて揚げ、
相性と季節感の一石二鳥を狙った秀作は
とかく倦怠を伴う天ぷらコースの重要なアクセント。
お次のみょうがは油切れの悪い失敗作。本日唯一のペケ。
続いて穴子が出てきて、ここで初めて天つゆを使うと
この穴子、みょうがの失点を挽回するに余りあった。
穴子だけに、穴を埋めるのが上手のようだ。
最後の赤伏見唐辛子は緑の青唐よりも甘みが強い。
酔ったら食事は取らないのに、
続いてのかき揚げは、ごはんのお替わりを誘うほど。
白瓜をパリッと噛んだときには、あら心地よし、
口の中を夏の涼風が一そよぎしていった。


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