「一歩一歩、おいしさを探して」
J.C.オカザワの脚で綴ったダイアリー

第45回
浅草に行ったら 何を食べよう (その1)

浅草といえば、いの一番に浮かぶのは観音様。
三社祭りにほうずき市、隅田川の花火大会、
ここいらあたりまでは地元の住民にも
観光客にも万民にこぞって愛されるイベント。

浅草寺の北を走る言問通りの向こう側、
いわゆる観音裏の植木市は近年衰退の一途、
あと何年続くことやら、、、寂しい限りだ。
それならば、騒々しいサンバ・カーニバルに消えてほしい。
半裸の踊り子のヘソや桃尻目当てのにわかカメラマンで
あふれかえる街頭の醜悪なことといったら、
観音様もさぞやお嘆きのことだろう。
発案者の伴淳は天才的な喜劇役者だったが、
トンデモないものを残して逝ったものだ。

目を転じて、浅草を代表する食べものとなると
どぜう・うなぎ・天ぷら・すき焼きといったところか。
下町風の江戸前鮨に、大衆的なふぐもある。
甘党向けなら、豆かん・雷おこし・芋ようかん。
このあたりは万人が認めるだろう。

どぜうは浅草の独壇場。
有名店、あるいは優良店が3軒も集中している。
あとはいずれも川向こうの深川に1軒、
両国に1軒あるのみで、こんなにマイナーな
料理ジャンルはほかに類を見ない。
うなぎも日本橋・神田と並んで
東京三代名所と呼んで差し支えあるまい。

天ぷらは残念ながらイメージ先行。
コロモの厚い、昔のご馳走みたいな天丼・天ぷらが
いまだに生き残り、評判はともかく、客足は衰えていない。
これもすべて、観音様のご利益だけれど。
すき焼きは精肉店が営む店も多いが、
家庭料理ならいざ知らず、今のご時世では
わざわざ料理屋に足を運んで食べるものでもなくなった。
それでもそこは浅草、文明開化以来の老舗も少なくない。
都内ですき焼き屋が残る町は、ほかに人形町があるくらい。

天ぷらの陰に隠れているが、とんかつのレベルは高い。
とんかつ発祥の地・上野をしのぐほどのもの。
「ゆたか」・「松むら」・「すぎ田」の3軒を
個人的には「浅草のとんかつ御三家」と称している。
もちろん上野の「本家ぼん多」・「蓬莱屋」・「双葉」に
対抗してのものだ。

「ゆたか」は何と言ってもロースカツ。
赤身・脂身のバランスがよく、1枚で2度美味しい。
ソバージュのかかった、しどけない千切りキャベツも特筆だ。
甘味処を思わせる小粋な店内の雰囲気もあいまって
根強いファンを掴んで放さない。

           =つづく=


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